第六十七話 リングにかける想い
その日、ヒカリ荘に派手な効果音が鳴り響いた。
ピコン! シャラ~ン! カメラ音、連写。
「どーもー! #宇宙一可愛い輪っか持ちでーす♡」
玄関に現れたのは、リングを光らせたド派手な姿の女――土星・ドナ。
「ついに来たか……インフルエンサー系惑星……」と、ヒカルがメモを取る。
「さっそく自撮ってるし……」とルナが苦笑した。
「今日のテーマは“自然体でも映える私”♡ 加工なし、でも盛れてる! ヒカリ荘で撮ると空間フィルター神ってる!」
「うるせぇ! ここは静養所じゃねぇんだぞー!」とサンが言うと、
「やだサン、まだその髪スタイルなの? 地球寄りすぎ。火のエレメンタル感もっと出してこうよ」
「いや太陽だし!」
ドナはスマホを掲げ、あらゆる角度から輪っかを見せつける。
「この子(=リング)、今日も絶好調。重力で支えてるってすごくない? 努力って見えないところに出るのよ」
トキオがぽつり。「あの輪っか、あいつの自我かもしれないな……」
ミラは静かに言った。「でも、彼女のSNS、すごく人気だよ。“自分を好きでいる”って、けっこう勇気だもん」
ドナは、パチンとカメラをしまい、最後に言った。
「SNSってね、誰かに見てもらいたいって気持ちの延長線上にあるの。誰も見てくれなくても、自分を楽しめれば、それで最高♡」
そう言って、リングをひと回ししながら、彼女は空へ帰っていった。
#ドナ襲来
#輪っかは心のシンボル
#また来るねヒカリ荘♡




