第六話 星座を並べかえる許可、ください!
「兄ちゃん、オリオン座って、なんであんな地味な並びなの?」
夜のヒカリ荘、テラスで空を見上げながら、次男のトキオが言った。
隣で寝転がるミラもうなずく。
「ミラはね……星座をもっと“ゆるキャラ風”にしたいの」
「うーん、たとえば?」
「カニ座を“おにぎり”にするとか……」
長男ヒカルが眉間にしわを寄せた。
「君たち、天文学者が泣くぞ……」
そのやりとりに、奥から月が現れた。手には紅茶、表情は相変わらず静か。
「星座の並びはね、古代ギリシャの神話がもとになってるの。
それに、星の名前はアラビア語やラテン語が多くて、科学的にも使われているのよ」
「へー。じゃあ“しし座”って、英語でなんて言うの?」
「レオ。ライオンね。ちなみに一番明るい星は“レグルス”っていうの」
「レグルス……ラスボスっぽい!」
「そこ! 興奮ポイント、間違ってる」
そこへ太陽もやってきた。手にはサンドイッチ。
「でも日本じゃ、星座って昔“和名”でも呼ばれてたんだぜ? たとえば“三つ星”とか“すばる”とかさ」
「すばる……聞いたことある! 車の名前!」
「そう。だけど元は“プレアデス星団”っていう星の集まりのこと。平安時代から詩にも詠まれてるんだ」
しばし、星たちは静かに空を見上げた。
「……そう考えると、星座って、昔の人からの手紙みたいだね」
ミラのつぶやきに、ヒカルとトキオも小さくうなずいた。
「やっぱり、勝手に並び替えるの、やめとこうか……」
「よくぞ気づいた」と月が満足げに言う。
ただし。
「……代わりに、裏星座として“ヒカリ荘座”つくるのはアリかもしれないけど」
太陽がニヤリと笑った。
翌朝、空にほんのり“光る五角形”が見えたのは、きっと偶然……かもしれない。