第六十四話 陽だまりの作戦会議
昼下がりのヒカリ荘。
陽射しがふわりと部屋に広がるなか、サンが腕を組んで仁王立ちしていた。
「……重大発表がある!」
突然の宣言に、居間の空気がピンと張り詰めた。
「なに? またあんパンの食べ比べ?」とトキオ。
「もしくは、光の角度による洗濯物の乾き実験?」とヒカル。
「ちがーう! 今回のテーマは――“ヒカリ荘、もっと注目されるにはどうしたらいいか”会議だ!」
「えっ、それって……注目されたいの?」とミラが首をかしげる。
「そりゃそうだろ! オレ、空のメインパーソナリティーだぞ!? もっとキラキラしてたい!」
「十分キラキラしてると思うけど……」とルナが静かに言った。
「いや、違う。これは“映え”の話なんだよ。ヒカリ荘って、地味じゃね?」
その瞬間、どこからかドカンという音とともに、雷が飛び込んできた。
「ヘイヘイヘーイ! なんかお悩みって聞こえたぞ!? カミナリDJ、参☆上!」
サンが嬉しそうに手を叩いた。
「よし、雷! 今のテンションで“ヒカリ荘プロモソング”作ってくれ!」
「任せとけ! ベースはビカビカ! ビートはドッカーン! フックは“サンが主役”で!」
「なにその露骨な自己主張!?」
そのとき、猫たち――蒼と翠がスッと現れ、雷の機材バッグの上に無言で座った。
「……あ、ちょ、そこ、そこ機材、重低音出すとこ……」
「無音より強し、猫の主張」とルナがポツリ。
会議はいつしか、猫と雷のにらみ合いになっていた。
サンは小さくつぶやいた。
「……ヒカリ荘って、注目されなくても、毎日おもしろいよな」
「それ、最初に気づいてくれればよかったのに」とミラが笑った。
陽だまりの中、猫と雷の緊迫バトルをBGMに、ヒカリ荘は今日も賑やかだった。




