表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/151

第六十話 天王星の視点

 ヒカリ荘の廊下で、テンがぼそっとつぶやいた。


 「……なんでオレだけ、横向いてんだろな」


 ルナが紅茶を片手に通りかかる。


 「また“自分の軸”に悩んでるの?」


 「そりゃあな。天王星だけ、ほぼ真横に寝転がって回転してるんだぞ? 地味にコンプレックスだろ」


 ミラが顔を出す。


 「でもそれ、ちょっとかっこよくない? “我が道を行く”感あって」


 テンは肩をすくめた。


 「いや、本人としては“行こうとしてる道が、寝っ転がってるだけ”なんだけどな」


 ヒカルも加わる。


 「でもさ、天王星って“横向きに自転”してるから、極地が昼夜の境目になるんだよね。つまり、北極とかが“昼”になったりする」


 「そうそう、季節も地球より極端なんだよね。1シーズン40年とか」


 テンがめんどくさそうに言った。


 「40年って……人生一周終わってんだよなぁ」


 サンがやってきて、テンの背中をバンッと叩く。


 「でも、それでこそテンらしいじゃん! クセあっても宇宙の一員!」


 「おまえが言うと、うるささ倍増だな……」


 ミラがふと聞いた。


 「テンって、誰かに“ちゃんと見てもらえてる”って思うことある?」


 テンは少しだけ黙って、ぽつりと答えた。


 「……見えにくい星だからこそ、気づいてくれる人がいたら嬉しいんだよ」


 ルナがそっと紅茶を差し出した。


 「じゃあ今日は、ちゃんと見てるわ。ほら、温かいうちに飲んで」


 テンはぶつぶつ言いながらも、紅茶を一口。


 「……悪くない。少しだけ、自分の軸が立った気がする」


 その日、ヒカリ荘には、少しだけ“斜め上の視点”が流れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ