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第五十九話 太陽、静かなる朝

 珍しく、ヒカリ荘の朝が静かだった。


 いつもなら誰よりも早く「おはよーっ!」と声を張り上げるサンが、まだリビングにいない。


 ミラがそっと覗くと、ベランダに座るサンの背中が見えた。


 「……どうしたの?」


 サンは少し振り返って、にやりと笑った。


 「たまには、静かに朝を始めてみようかなーって」


 「……どしたの、熱ある?」


 「ないない!」


 それでも、サンは珍しく声を張り上げず、空を見上げていた。


 「オレさ、“まぶしい”“うるさい”ってよく言われるじゃん?」


 「事実だからね」


 「うん、それはいいんだけど。でも、たまに思うの。“光”って、ただ明るければいいのかなーって」


 ミラは隣に座って、しばらく黙っていた。


 「……昨日、ちょっと雲多かったもんね」


 「そうそう。雲の中にいると、明るさって届きにくいんだなーって思った」


 「でも、ちゃんと“そこにいる”ってことは、伝わってたよ」


 サンはしばらく黙っていたが、ぽつりとつぶやいた。


 「……ありがとう。それだけで、ちょっとホッとした」


 そこへルナが紅茶を持って現れた。


 「太陽も、自分を隠したくなるときがあるのね」


 「いや、別に隠れたいわけじゃないけどさ。……たまに、“静かな光”ってやつも、悪くないなーって」


 ミラが笑った。


 「そういう朝も、いいよね」


 サンは立ち上がって、背伸びをした。


 「よーし、じゃあ午後から全開で行くかー!!」


 「やっぱり元に戻るんだ……」


 「太陽ですから!! 沈んでられません!!」


 そう言って、サンは勢いよくリビングに戻っていった。


 いつものまぶしさが、今日もちょっとだけ、優しかった。

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