第五十五話 まぶしさの正体
ある朝、ヒカリ荘のリビングにて。
ミラが目を細めながら、ブラインド越しに窓を見ていた。
「……まぶしいなぁ」
「オレのせいか?」とサンが反射的に反応した。
「うん、たぶんそうだと思う」
「すまん。ちょっと今日、やる気出しすぎた」
「太陽って気合いで光量変えられるの……?」
そこへヒカルがやってきて、目をこすりながら言った。
「うわ、朝からまぶしっ……」
「ほら、また言われた!」とサンが口をとがらせた。
「いや褒めてないし」
「でもさ、まぶしいって、実は褒め言葉なんじゃないかって最近思ってるんだ」
「は?」
「人間だってさ、“キラキラしてるね”とか“輝いてる”って言うじゃん? それって、見てるだけで目が覚めるような存在ってことじゃん?」
ミラが小さくうなずいた。
「なるほど……つまり“まぶしい”って、“ちょっと眩惑されるくらい影響を受けてる”ってことかも」
「でしょでしょ!? “まぶしい”って言われたら、今日一日調子に乗っていいってサイン!」
「違うと思う」
ルナがコーヒーを片手に現れた。
「“まぶしい”は、たまに“うるさい”と紙一重よ。適度に落ち着きなさい」
「説得力が満月の夜より強い……」
そこへトキオも登場。
「っていうか、紫外線多すぎ。サングラス常備したくなる」
「みんな辛辣!」
サンは肩を落とした。
だけど、そのあとヒカルが笑った。
「でもさ、サンがいてくれると、ちゃんと“朝”って感じがするよ」
ミラもうなずいた。
「太陽がまぶしいときって、自分が“ちゃんと起きてる”って感じがして、ちょっと嬉しいんだよ」
サンはしばらく黙ってから、ぽつりと答えた。
「……それ、なんかいいな。まぶしいって、そういう意味もあるんだな」
ルナが微笑む。
「光は、届く側が決めるもの。あなたは、ただ照らせばいいのよ」
今日のサンは、少し控えめに、でも確かにまぶしかった。




