第五十二話 酔いどれ星空ナイト
ヒカリ荘の屋上に、にぎやかな声が響いていた。
「かんぱーい!!」
掛け声とともに、コップや湯のみがカチンとぶつかる。
主催はサン。
集まったのは、風、雲、流れ星、虹――そして、ひときわ目立つあの男。
「雷でーーーーす!! 今夜は空フェス開催ッ!! ぶち上げていくぞーー!!」
バチバチと光をまとったカミナリDJ・雷が、空にスピーカーを打ち上げながら登場した。
「ちょ、DJブース屋上に持ち込んでる!?」と流星が目を丸くする。
「照明が稲妻なんだけど!」と虹が笑う。
「うるさいけど最高!!」とサンが拳を突き上げた。
風はスモークマシンのように靄を巻き、雲は光にあわせて形を変え、空のパーティーはヒートアップ。
雷がターンテーブルを回しながら叫ぶ。
「空に響け! おつかれさまの轟音ッ!! 願いも悩みもブチ上げろーーッ!!」
場のテンションは最高潮。
でも、その熱の中で、ふと流星が言った。
「……オレさ、流れ星だから“届けるだけ”が仕事なんだけど」
「うん」
「たまに、こうして“誰かといる時間”ってやつ、悪くないなって思うんだよ」
虹もぽつり。
「オレも、どうせすぐ消えるんだけど……今日はちょっと、残ってもいい?」
雲がやわらかく広がった。
「今日は、そういう夜だよ」
雷が最後のビートを落とした。
「盛り上がってるとこ悪いけど、オレそろそろ次の雲に行くわ! 雷様にも時間割あるんで!」
「短っ!」とみんながツッコむ中、雷は稲妻の音とともに空へと消えた。
静けさが戻った屋上で、サンが言った。
「いや~いい夜だった。みんな、今日だけは照らされに来てくれてありがとな」
グラスを掲げる太陽に、みんなもそれぞれのコップを重ねた。
その瞬間、星たちがきらっと揺れた。
空のどこかも、ちょっとだけ酔っていた。




