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第五十一話 星の声をひろう人

 ある夜のヒカリ荘。


 ミラはひとり、屋根の上にいた。


 静かな夜。風も雲もいない。音のない空。


 だけど――彼女には、なにかが聞こえていた。


 「……星が、ささやいてる」


 小さくつぶやくと、そっと耳をすます。


 その姿を見つけたヒカルが、そっと隣に腰を下ろした。


 「なに聞こえてるの?」


 「ひとりごと。だけど、星のね」


 「詩的だな……というか意味がわからない」


 ミラは笑った。


 「さっき、空の奥から“ありがとう”って声がしたの」


 「……それ、前回の話とつながってない?」


 「時系列の詩的再解釈」


 「便利な言葉すぎるよ、それ」


 そこへ、トキオもやってきた。


 「なにしてんの、こんな時間に」


 「ミラが“星の声を聞いてる”んだってさ」


 「星の……声?」


 ミラは目を細めて言った。


 「たとえば、ひとつの星が“だいじょうぶ”って言ってる気がして。

  もうひとつの星は、“忘れないで”って」


 「……それって、もしかしてミラの心の声なんじゃ」


 「それでもいいの。夜空って、心の鏡みたいだから」


 沈黙が、ふわりと漂った。


 サンの声が下から響く。


 「おーい! 夜食ラーメンできたぞー!」


 「また太陽のくせに深夜にカップ麺かよ……」とヒカルがぼやく。


 トキオが立ち上がりながら言った。


 「ミラ、降りるぞ。ラーメンは星の声より強い」


 ミラは、もう一度空を見上げてつぶやいた。


 「……またね、夜の声たち。ちゃんと、聞いてるからね」


 星たちは何も言わなかった。


 でも今夜も、ヒカリ荘には静かな詩がひとつ、落ちていた。

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