特別編 月、詩う夜に ~ありがとうの光~
ヒカリ荘の夜。
その日は、満月だった。
「この空に、届けよう……今夜の光と、感謝の気持ちを――!」
ルナの詩が、また暴走していた。
「出たな、満月ルナ!!」とサンが叫ぶ。
「いや今日すごくない? 詩の構成が八連句になってる……!」とトキオが焦る。
「今回は何か違う」とヒカルがつぶやいた。
ルナはベランダに立ち、静かに、けれど情熱的に語り始めていた。
「私たちがここにいて、笑っていられるのは……このヒカリ荘の空を、いつも見上げてくれる誰かがいるから。
この光も、詩も、願いも、誰かに届くと思えるから――私たちは今日も、輝けるのよ」
ミラがぽつり。
「……今日は、“感謝”の満月なんだね」
そのとき、ひときわ大きなノック音。
「お届けでーす☆ “ありがとう便”、一件!」
金色のスーツをひるがえし、流星がふらりと登場。
「ルナにこれ、ってさ。送り主は、“読んでくれてる誰か”だって!」
差し出された封筒の中には、星型のしおりと、小さな手紙。
――あなたの詩に、救われた夜がありました。
ヒカリ荘の空に、ありがとう。祝・50話!
ルナは、そっと目を閉じた。
「……届いていたのね」
「ねえ、今日はさ」とサンが言った。
「ヒカリ荘、ちょっとだけ照らしてみようぜ。うちらなりの“お返しの光”ってやつ」
ヒカルがライトを配り、ミラが星型の紙をちぎり始めた。
トキオは手製のスピーカーで音楽を流す。
屋根の上に並んで、5人は空に向かって声を合わせた。
「祝! 50話ーーー!! そして、ありがとうーーー!!」
誰に届くともわからないけれど。
空のどこかで、きっと誰かが、くすっと笑ってくれる気がした。
その夜、ヒカリ荘には満月より少しだけまぶしい“感謝の光”があった。




