第四十六話 虹がくれた休息
朝まで続いた雨がようやく止んで、ヒカリ荘の屋根にやわらかな陽が差したころ——
「うぃーっす! にじ、参上〜☆」
雲をかきわけて現れたのは、ド派手な服にきらきらの髪をなびかせた七色の旅人、虹だった。
「また派手に来たな〜」と、サンが笑う。
「もうちょっと控えめに登場できないの?」とルナがため息をつく。
「いやいや、オレってば“現れた瞬間に映える”のが売りだからさ~。地味とかマジ無理」
虹はヒカリ荘の縁側にふわっと降り立つと、大きく伸びをした。
「でもさ〜、最近マジで出番減ってて……雨と太陽のセットって、ほんとレアなんだよね。
天気予報アプリ、毎日3つ見てるよ。マジで“空の読み”は命」
ヒカルがメモ帳にさらさらと書き込む。
「虹の出現率と天気分布、今度データとってみたいなあ」
「研究材料にされてる……」と虹は肩を落とす。
ミラがにっこりして言った。
「でも、出てきてくれると嬉しいよ。ほんの少しでも、“綺麗だな”って思える時間をくれるから」
虹は照れくさそうに笑った。
「……そーいうこと言われると、すぐ消えたくなるじゃん。でも今日はちょっと、ここでぼーっとしててもいい?」
「どうぞ」とルナが静かに言い、サンが笑顔でお茶を入れにいく。
その午後、ヒカリ荘の空には、七色の光がゆるやかにかかっていた。
ほんの少しでも、空がきれいだと思えたら——
その日の心は、少し軽くなる。