表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/110

第四十五話 午後ティーと、やさしい沈黙

 ヒカリ荘のリビングに、あたたかな光が差し込んでいた。


 ミラが湯気の立つ紅茶をそっとテーブルに置く。


「午後って、ちょっとだけ優しくなれる時間だと思わない?」


「おいおい、午前中から優しくしてくれよ」とサンが笑う。


 トキオは新聞を読んでいたが、ちらりと目を上げて言った。


「でもまあ……午後は確かに、空気がやわらかいかもな。さっきから蝉の声も静かになってるし」


「きっと、空が少しだけ休憩してるのよ」とルナがカップを口に運ぶ。


 ヒカルはスコーンに蜂蜜を塗りながらぼそり。


「脳波的にも午後のほうがリラックスしやすいらしいよ。副交感神経優位ってやつで」


「だからってその情報をスコーンにかけるな」とトキオがすかさず突っ込む。


 サンは大きく伸びをしてから、ぽつりとつぶやいた。


「……なんか、いいな。こんな午後も」


 誰も続けようとせず、ただカップの音だけが静かに響く。


 ミラがにこっと笑って言った。


「午後って、しゃべらなくても、あったかいよね」


 誰も否定しなかった。否定する必要もなかった。


 ヒカリ荘の午後は、ことばのない会話で満ちていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ