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第三十八話 影をさがして、夏をのがれて

 ヒカリ荘の屋根の上、昼過ぎ。

 灼熱の太陽がどかんと居座っていた。


「……あつい……」


 トキオが屋根に寝転がっていたが、ついに音を上げた。


「サン、ちょっと本気出しすぎじゃない!?」


「えー? 夏って言ったらこれでしょ!? 太陽のフルパワー!!」


「焼け石にアイス落としたら、ジュって音したんだけど!?」


 そこへルナが日傘をさして登場。


「暑いのも趣があるけれど、度を越すと風情も溶けてしまうわ」


「名言っぽいけど、つまり暑すぎってことだよね」とヒカル。


 ミラがそっとうちわを差し出した。


「ミラは、影って“空がくれたシェルター”だと思うの」


「なんか涼しげな詩的コメント出てきた! 採用!」


 トキオは屋根の上に日陰を求めてゴロゴロ転がる。


 そこへヒカルが、ダンボールで手作りした“簡易影発生装置”を持って現れた。


「見て! 反射板を逆向きにして、日陰をつくるこの発明! 名付けて“シャドウ・メーカー”!」


「ネーミングが強すぎる!」


「たぶん、それ、ふつうの“板”だよね?」と月。


 太陽は頭をかいて笑った。


「じゃあ、今日は少し手加減するかー」


 その言葉に、すっと風が吹いて、雲がひとつ、空を横切った。


 屋根にやわらかい影ができる。


 そのなかで、トキオがごろりと寝返りをうって言った。


「……あー、これだよこれ。“ありがたみ”ってやつ」


 空のうえにだって、暑さとやさしさは、ちゃんと交互にやってくるのだった。

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