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第三十五話 ロマンが止まらない夜

 ヒカリ荘の屋上、午後八時。

 空はすっかり夜の顔になって、星たちがぽつぽつと点灯しはじめていた。


「今日は……いいぞ……!」とヒカルが高らかに宣言した。


「なにが始まるの?」とトキオがアイス片手に聞く。


「夏の夜といえば、星座観察でしょ! しかも今日、天の川がわりとはっきり見える日なの!」


「ヒカル、そういうの、毎年言ってない?」と月。


「毎年言ってるけど、今年も言わせて! ロマンは更新されるから!」


 太陽が空を見上げて、ぼそっと言った。


「……でもさ、星座って、結構ムリがない? あれが“弓”とか“鳥”とか言われても……」


「それ言っちゃダメーーー!!」


 ミラがうんうんとうなずく。


「ミラもね、カシオペア座は“ちょっと曲がった椅子”に見える」


「オリオン座は、なんか“ジャンクな電飾”っぽいよな」


「ロマンよ! 想像力で補完するのがロマンなの!!」


 星たちが空のうえで、くすくすと笑っていた。


「いいんだよ、意味がなくたって。

 誰かが“あれは希望だ”って決めたら、それが希望になるんだもん」


 ヒカルは寝転びながら空を見て、ぽつりとつぶやいた。


「空って、自由でいいよね。誰にも形を決められないのに、みんな好き勝手に願いをかける」


「……それって、星座に感謝すべき?」


「たぶん、空そのものに感謝すべき!」


 そのとき、ふいに風がふいて、雲のすき間からひとすじ、天の川がのぞいた。


「見えた……!」


「やっぱりロマン、ありましたー!!」


 今夜も空は、好き勝手にロマンを抱く誰かを、そっと見守っていた。

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