表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/151

第三十一話 ひきだしには、なにがある?

 ヒカリ荘のキッチンのすみに、ずっと誰も開けていない引き出しがあった。


「……これ、なに入ってるんだっけ?」


 トキオが指差すと、ヒカルが首をかしげた。


「調味料じゃなかったっけ?」


「いや、前に開けようとしたら、なんか“ざらざら”って音がしたんだよね」


 「ざらざら……?」


 「それって、星砂?」とミラが興味津々でのぞきこむ。


 太陽が得意げに割って入った。


「よし、ここは俺に任せろ! 30話分の勇気、いま発揮する!」


「それ、さっきの記念回ひきずってるでしょ」と月が冷静に突っ込む。


 ごそっ。


 ゆっくり引き出しを開けると、中には……紙の束。手紙? と思ったら、全て“未提出の買い出しメモ”だった。


「これ……全部“そのうち買おう”って言って、買ってないやつだ……」


「“バニラアイス”とか“雲形パスタ”とか、“宇宙の香りの芳香剤”って何!?」


「“空の味がするプリン”とか、“夜のにおいがする柔軟剤”とかもある……!」


「空、自由すぎるだろ……」


 ミラが、そっと一枚を手に取って言った。


「でもね……“そのうち”って、未来のたのしみみたいで、好き」


 「確かに、“今じゃない”っていう余白があると、なんか安心する」とヒカル。


 「それに、誰かが忘れてたことを、みんなで見つけるって、ちょっといいな」


 太陽がまとめにかかる。


「つまり今日わかったのは、“引き出し”ってのは、“思い出の仮置き場”ってことだな!」


「うまいこと言った風だけど、たぶんそれ、プリンを買い忘れただけよ」と月。


 その日、ヒカリ荘の食卓には、なぜか“普通のプリン”が並んだ。


 たぶん、“空の味”はしなかったけど――

 なんとなく、未来の味がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ