特別編 空のうえでは、まだまだ途中
ある日、ヒカリ荘のリビングに、妙なテンションの垂れ幕が掲げられた。
《祝!連載30話突破!!!》
サンの手書きで、文字がやたらでかい。
「よーし! 本日は“空みん30話記念・大感謝祭”であります!!」
「……いや、なんで30話で祝うの? 50話とか100話とかならわかるけど……」とヒカル。
「でも、なんかこう、積み重なってきた感はあるよね」とトキオ。
「ミラはね……“区切りっぽく見える中途半端”がいちばん好き」
月は紅茶をすすりながら言った。
「まあ、祝いたいときに祝うのが、空みん流ね」
太陽は気合いを入れて、オリジナル賞を配り始めた。
「“もっとも読者に優しそうな声で話すで賞” → ミラ!」
「“一番テンションに波がありすぎ賞” → ルナ!」
「“しゃべりすぎ注意報で賞” → 俺!!」
賞状は全部、コピー用紙にサインペンだった。
そこへ、そっと封筒が舞い込む。差出人は、まひろちゃん。
中には、ちょっとだけクレヨンのにじんだ一言。
**「そらのみんな、ありがとう」**
誰かが読んだわけじゃないのに、ヒカリ荘がしん……とした。
月が立ち上がり、空に向かってささやくように言った。
「……じゃあ、今度は私たちから手紙を書きましょう」
太陽がうなずいて、星たちが便せんを用意する。
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**――空のうえから、君へ。**
ここまで読んでくれて、ありがとう。
君がページをめくってくれたこと、
たぶん誰も気づかないけど、
空はちゃんと、見ていたんだ。
言葉にならないまま終わった夜や、
どうしても言えなかったこと。
君のなかに残っているその静かな気持ちを、
私たちはぜんぶ、知っているわけじゃないけれど――
それでも、空から見てるよ。
今日もどこかで、君が君でいてくれてること。
だからまた、ふとしたときに思い出してくれたらうれしい。
この空には、君のことをちゃんと見ている“誰か”がいるってこと。
またね。
――ヒカリ荘より
次回(第三十一話)は通常回に戻って、日常+αのユーモアでお届けします!
季節感やキャラのフォーカスなど、ご希望があればいつでも教えてください。