表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/151

第二十七話 あつい日には、空もぐったり

 ヒカリ荘、午後二時。

 空は真っ青。蝉の声が、空気をぎゅうぎゅうにしていた。


「……なあ、今日、暑すぎじゃね?」


 太陽がつぶやくと同時に、トキオがアイスを顔に当てながらうなだれた。


「アツすぎて脳が考えるのを拒否してる……」


「“脳の自衛本能”ってやつだね」とヒカル。


 ミラはレモン水を持ったまま、ソファで半分とけていた。


「ミラはね……今日は“ひんやりした言葉”だけで会話したいの」


「じゃあ、しゃべるときに“氷”とか“風鈴”とか入れる?」


「風鈴の音で思考を冷却中……しばらくお待ちください……」


 そこへ月がひょっこり現れた。扇風機を抱えている。


「冷房は? と思ったけど、これがいちばん身体に優しいらしいわ」


「おまえ、絶対どっかで読んだだろ」


「“夏の夜は、弱風の扇風機と文庫本がいちばん”って言ってたのは、誰だったかしらね?」


 みんなで扇風機の風に当たりながら、何もしない時間が流れていく。


「……てか、“暑くてだるい”って、地上の人間もこんな感じなんだろうな」


「うん。きっと今ごろ、まひろちゃんも麦茶飲みながら床でゴロゴロしてる」


「ミラはね、それも“夏らしさ”だと思うの」


 空は、ぴたりと動きを止めたように、静かだった。


 でもそれでいい。

 “がんばらない空”があったって、かまわない。


 あつい日は、空だって、ときどきぐったりする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ