第二十四話 夜の空を、こっそり覗く
夜のヒカリ荘は、基本的に太陽の出番ではない。
だから、たいてい彼はぐっすり眠っている……はずなのだが。
「しーっ……内緒でちょっとだけ」
その夜、太陽はこっそり屋上に上がってきた。
「……やっぱ、夜空って、すげぇな」
見上げた空には、月と星たちが静かに輝いていた。
「サン、どうしたの? 夜に動くなんてめずらしい」
月が紅茶を手に現れた。
「なんかさ、夜って、オレには無縁の世界だと思ってたけど……
でも、たまにこうして眺めると、オレがいない空もちゃんと綺麗だなって思ってさ」
「あなたの光があるから、夜が休めるのよ」
「……そういう考え方も、あるか」
そこへ星たちもやってきた。
「ねえサン、夜空って怖い?」
「いや……ちょっとさびしいだけ。でも、悪くない」
ミラがそっと言った。
「ミラはね、太陽のいない夜空も好きだけど……
太陽が、夜空を見てくれるのも、もっと好き」
太陽は少し照れながら、帽子を深くかぶった。
「……ありがとな」
夜空を照らすことはできないけど、
見つめることはできる。
そんな夜が、あってもいい。
その夜、屋上の片隅に、ほのかなあたたかさが灯っていた。




