第二十一話 ミラの占いは、当たるかもしれない
ある夜、ヒカリ荘のテーブルに、ミラが星図とノートを広げていた。
「なにしてんの、ミラ?」
「……占いの練習。ミラね、今日から“星うらない師見習い”になるの」
唐突な宣言に、トキオとヒカルが顔を見合わせた。
「え、そんな制度あったっけ?」
「いや、聞いたことない。でも面白そうだから、黙って見てよう」
ミラは真剣な顔で、星の位置と角度をじっと見つめる。
「今日の星の並びは……おだやか。だから、“焦ってる人”は深呼吸するといいと思うの」
「それ、誰でも当てはまりそうじゃない?」とトキオが突っ込む。
「うーん……じゃあ、“コーヒーを三杯以上飲んだ人”は要注意。胃に来る」
「それもう占いじゃなくて生活指導だな……」
そこへ月がやってきて、そっとノートを覗いた。
「でもね、ミラの言葉、たまに“今いちばん言われたいこと”になってるわよ」
「……えへへ。だったら、ちょっと嬉しい」
ミラは最後に、みんなに向けてこう言った。
「今日のヒカリ荘の運勢は――“光を見つける力、じゅうぶんあり”。だから、あんまり心配しなくてだいじょうぶ」
ヒカルが静かに拍手を送った。
その夜、空は少しだけ柔らかく光っていた。
当たるかどうかは、たいして問題じゃないのかもしれない。
“誰かがやさしい目で見てくれてる”――その事実だけで、未来は少し明るくなる。