第十九話 太陽、しゃべりすぎる
ヒカリ荘の居間に、ちいさな高座が設置された。
「さあさあ! 本日の演目は“空模様ひと笑い”! 演者はこの私、太陽でございます!」
太陽が勢いよく登場すると、星たちがぽかんと口を開けた。
「え、急にどうしたの?」
「最近、“しゃべりすぎる上司”って言われたらしくてさ。それならいっそ、しゃべり芸にしてやろうと思って」
「前向きなのか、開き直ってるのか……」
月は紅茶を飲みながら静かに見守っていた。
「では一席、“雲と晴れ男”――ある日、晴れ男が雲に言いました、“おまえ、いつも空気読まねぇよな!”と……」
……数分後。
ヒカル「それ、オチは?」
トキオ「いや、オチの前に話が迷子になってた」
ミラ「ミラはね……なんとなく“湿度高めの話”だったと思うの」
太陽は、軽く頭をかいて笑った。
「落語ってさ、しゃべりすぎると伝わらないんだな……」
「“間”と“温度”って大事なのよ」と月がやさしくつぶやいた。
「でもさ、おまえが話してると、ちょっとあったかい感じにはなるよ」とヒカル。
「オチなくても、“まあいっか”ってなる」とトキオ。
「ミラは、また聞きたいな」
太陽はちょっと赤くなって、座布団に深く腰を下ろした。
「じゃあ……次は“星の漫才”とかやってみるか?」
その夜のヒカリ荘には、うっすらと笑い声と、あたたかい空気が流れていた。