第百四十話 銀河のむこうから
「……あなたたちの“時間”は、とても騒がしいのね」
アンドロメダがそう言ったのは、ヒカリ荘の面々がギンガ荘を訪れた夜のことだった。
一同が彼女の部屋に案内されると、そこはまるで“未来の空間”のようだった。
浮遊するオブジェ、静かに流れる重低音の音楽、そして時折自動で話しかけてくる“光の書”。
「わぁ、なんかSF映画のセットみたい!」とミラが感嘆の声をあげる。
「この部屋、静かすぎて落ち着かないんだけど……」とサンがそわそわしていると、
アンドロメダはそっと目を閉じた。
「あなたたちは、光の波に身を任せて生きている。でもわたしは、その“波の向こう側”を見たいの」
「ちょ、抽象度が急上昇した!」とトキオがツッコむ。
「……たとえば、思考が進化すれば、“沈黙”も会話になるのよ」
「それもうテレパシーやん……」とヒカルが苦笑する。
だがその言葉に、ルナは頷いた。
「分かるわ。言葉じゃなくて、存在で伝わるものがある」
「……いい詩ね」とアンドロメダは微笑む。
結局この夜、アンドロメダとの会話は、少しだけ難しく、でもどこか心地よかった。
帰り道、ミラがぽつりとつぶやいた。
「なんか、銀河って“遠い”けど、“通じる”って気がしたなぁ」
星々の距離を越えて、心の銀河がすこしだけ近づいた夜だった。




