表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/151

第百三十八話 ゆれる星の鼓動

ベテルギウスは、大きな大きな星だった。


ギンガ荘のラウンジにどっかりと座って、目を閉じて呼吸を整える。時折聞こえる「ドン……ドン……」という音は、彼の鼓動。恒星のリズムだ。


「ねえベテルギウスさんって、いつ爆発するんですか?」

子どもたちの無邪気な質問に、彼はいつも困った顔で笑う。


「……まだ、大丈夫だと思うよ。たぶん」


自分でも正確にはわからない。いつ終わりが来るのか。それは星の誰にも決められない。


ある日、ヒカリ荘のサンが遊びに来た。リゲルと筋トレ談義をした後、ベテルギウスの隣に座った。


「ベテ。元気か?」

「うん。たぶんね」


ふたりはしばらく空を眺める。そこには何もないようで、たくさんのものがある。


「俺、たまに思うんだ。もしも突然消えたら、誰か泣くかなって」

「……泣くよ。絶対に」


サンはきっぱりと答えた。


「お前がいなくなったら、空に“あの場所”がぽっかり空くだろ? そしたら絶対、誰かが“ここに星がいた”って言うさ」


ベテルギウスは、ほんの少しだけ目を細めた。彼の鼓動が、静かに響いた。


「ありがとう。……そうだね、まだ輝いてみるよ」


そしてその夜。ギンガ荘の窓から見えたのは、いつもより少しだけ赤くて、やさしい光。


それは、終わりではなく――彼が「今を照らす」と決めた光だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ