表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
143/151

第百三十三話 星のさんぽ道

ヒカリ荘の夜は、いつだって静かで、どこか懐かしい。


その夜、猫の蒼と翠は、雲のすき間から顔をのぞかせた満天の星空に、ふたりだけの散歩に出かけることにした。


「今日は遠くまで行こうよ!」

翠がひと声あげると、蒼は「……にゃ」と短くうなずいた。


ふたりは音もなく空をすべり、やがて最初の星――「おうし座」の近くに降り立った。

黄金にきらめくアルデバランが、ふたりを見下ろす。


「おっきいね、あの星。あったかそう」

「……にゃ」


次に訪れたのは、「ふたご座」の双子星、カストルとポルックス。

ふたりの間をぴょん、と跳ねる翠に、蒼が少しだけ目を細める。


星々は、言葉を交わさずとも、ただそこに在るだけで、何かを語っているようだった。


「ねえ、蒼。星って、寂しくないのかな?」

「……にゃあ」


それは、「寂しい」とも「平気だよ」とも聞こえる不思議な鳴き声だった。

だから翠は、それ以上は訊かず、ただ空に身を預ける。


最後にふたりが降り立ったのは、「こいぬ座」のプロキオンの近く。

ちいさな光が、猫たちの足元にふわりと集まってくる。


「……今日は、いろんな星に出会えたね」

「……にゃ」


ふたりはしばらく、黙ってそこに座っていた。

きらきらと瞬く星たちは、きっともう、それだけで誰かの心を照らしているのだろう。


やがて蒼がゆっくり立ち上がる。

「……帰ろっか」


「うん!」


ふたりの猫は、雲のうえのヒカリ荘へと、また静かに歩き出した。

夜空はまだ、星たちの光でいっぱいだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ