第百三十話 ツッコミは一日にしてならず
ヒカリ荘の朝は、今日も騒がしい。
「おいサン!それ、トースターじゃなくてラジオにパン突っ込んでるぞ!」
「なにぃ!? 朝から『パリッ』とした音が鳴ったからてっきり!」
トキオはコーヒーを吹きそうになりながらツッコんだ。
「ルナ、それ…靴下じゃなくてハンカチだからな」
「気づいてたけど、あえて詩的に足を拭いていたの」
「どんな美学だよ!」
ミラはというと、バスタオルをマントのように羽織り、窓辺で風にたなびかせている。
「ボク、今日から風の精になるんだ〜」
「住人としてのアイデンティティ捨てるな!」
ヒカルはいつものごとく、ホワイトボードに“今日の雑学”を書いていたが──
「本日の星の豆知識:月はチーズでできている(諸説あり)」
「お前、それどこ情報!?」
サンがひょっこり現れ、「今日は“自分で自分を照らす”修行に出る」と空に飛び立ちそうになり──
「それ逆光になるだけだろーが!!」
そして最後、雲の精がふわふわ浮かびながらこう言った。
「なんだか今日、トキオの声が響く日〜」
「俺の喉はもう限界だよッ!!」
全員が自由すぎるヒカリ荘。
けれど、この“いつもの朝”が、トキオにとってはなにより大事な日常なのだった。




