第十三話 休むって、むずかしい
その日、太陽がぽつりとつぶやいた。
「オレ、休みってどうやって取ればいいんだっけ?」
ヒカリ荘のリビングにいた面々が、ぴたりと動きを止める。
「……珍しく弱気だな」と月。
「いや、ちょっと燃え尽きたっていうかさ。朝も昼も毎日照らしてるし、みんなに“眩しい”とか“暑い”とか言われるし……なんか、こう……ひと休みしたいんだけど……」
ミラが小さくつぶやいた。
「ミラはね、休みの日って、ちょっとソワソワする」
「俺も!」とトキオが元気よくうなずく。「“何かしてないと不安”になるんだよな~」
「……結局、休むことにも“練習”が要るのかもな」とヒカル。
月がゆっくりと紅茶を淹れながら言った。
「太陽。あなたが照らすのをやめたら、地上は困ると思ってるんでしょう?
でもね――照らさない時間があるからこそ、人は“朝”を喜ぶのよ」
「……なるほどなぁ」
太陽は大きくのびをして、ぽん、と座布団に腰を下ろした。
「じゃあ今日はもう、照らさない。ソファで昼寝する。誰も起こすなよ?」
「無理だな」と星三兄弟が声をそろえる。
「絶対途中で“いいこと思いついた!”って起きるに一票」とトキオ。
「いや……今回は本気っぽい」とヒカル。
「寝顔、あったかそう……」とミラが毛布をかけた。
その日、空は少し曇っていた。
でも、やさしいグレーは“おやすみ中”のサインなのかもしれない。
空の住人たちもまた、休み方を少しずつ覚えていく。




