第百三十四話 バズりたくて、空
「バズりたい。これはもはや星の使命!」
朝のヒカリ荘リビング。
トキオはカメラ片手に、どや顔で叫んでいた。
「また始まったわね……」
紅茶を飲むルナが静かにため息をつく。
「ほら見てこれ!『#空コーデ』ってタグ、最近じわじわ伸びてるんだよ?
僕のフォロワー数、今日で1000行くかもしれない!」
「で?何を着たら空っぽくなるんだよ」
サンがあくびをしながら覗き込む。
「トキオくんはもう“空そのもの”よね」
ミラが微笑むと、ヒカルが冷たく切り返す。
「バズることと、価値があることは別だけどね」
「いやいやいやいや!いいね数は信用って時代だよ!?
てことで、今日は“映える空飯”チャレンジしまーす!」
*
キッチンで出来上がったのは、
青いゼリーに白い雲型のマシュマロを浮かべた「空パフェ」。
そして背景はもちろん、屋上の時間テラス!
「どう?この映え力!」
「……おなか壊しそう」
「甘すぎ」
「写真だけはきれい」
三兄弟による辛口レビューに凹みかけたトキオ。
しかしその投稿は――
\ 8.3万いいね!✨ /
「うおおおおお!?!?バズってるぅ!!」
「……それ、某有名アカウントがRTしてくれたからじゃない?」
「いやー、持ってるな僕って! 次は“空ボイス”かな、癒しの声出す練習してくる!」
こうして今日も、ヒカリ荘には小さな騒がしさが舞っていた。
誰かに届くその瞬間を信じて、星は今日も投稿する――空の上から。




