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第百三十三話 走る星の、理由(わけ)

「ヒカルが……走ってる……?」


ヒカリ荘の屋上から見下ろしたトキオは、目を疑った。

その視線の先――雲の切れ間にあるフィールドで、いつもなら机と本の間にいる長男ヒカルが、ジャージ姿で疾走している。


「……これは夢か……? 星の終わりか……?」


ヒカルはトキオの驚きをよそに、汗をぬぐいながら自分の記録表を見つめていた。



事の発端は、ほんの軽い一言だった。


「最近、ちょっと身体が重いんだよな」

サンのぼやきに、ヒカルがつい口を出した。


「代謝の問題だね。基礎体温と筋繊維の密度が落ちてる証拠だよ。まあ、僕には関係ないけど」


「……なんだとぉ?」


もちろん、売られた喧嘩は買う主義のサン。


気づけば「誰が先に1km走れるか勝負だ!」という流れになり、

なぜかヒカルもそれに乗ったのだった。


「言葉より、実証が正義だとでも思ったんだよ……ほんの、気まぐれさ」



結果から言えば――


ヒカルは、ビリだった。

圧倒的に。


「もうやめる?」とトキオが声をかけた時、

ヒカルは笑っていた。


「いや……なんだか、悪くない。数字で表せない“実感”ってやつだろ?」


その言葉に、サンも肩をすくめた。


「ま、体力は置いといて……根性だけは合格だな、星兄」


今日、ヒカルは誰よりも青い空の下で、汗をかいた。

それだけで、少しだけ星が“人間くさく”なった気がした。

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