第百二十八話 星座の道、私の道
〈朝の校庭〉
「今日は“黄道十二星座”について話そう」
朝礼でそう語り始めたのは校長のヒカルだった。
「黄道十二星座とは、地球から見た太陽の通り道――“黄道”上に位置する12の星座のこと。おとめ座、いて座、さそり座……おなじみの顔ぶれだな」
講話が終わると、ざわ…と空気が揺れる。
「つまり私たちが“公式”ってことよね」
てんびん座のてんが誇らしげに腕を組む。
「えー、ズルいー」とリーナとうらら(うお座)がぷくーっと膨れる。
「公式組とか非公式組とかあるの!?」
レオン(しし座)が叫ぶ。
「オレは……入ってたよな!? なぁ、ヒカル校長っ!」
「もちろん入ってるさ。君は堂々たるライオン座だからね」
「よっしゃぁあああ!」
その様子を遠巻きに見ていたペガサス座のペガがボソリ。
「……そもそも俺、十二星座じゃねぇし」
「うちらもだよ〜」とうしかい座のボウが保健室の窓から顔を出す。
「いや、あんた寝てたやん」
「待って、じゃあ“ふたご座”ってどっちが入ってるの?」
「わたし!」「いや、ボクだよ!」
ジェナとジェムが言い争いを始め、ルナ先生が淡々とツッコむ。
「ふたごで1枠です」
「おかしい……なぜしし座がいて、ぼくがいないんだ……」
オリオンが遠くを見つめる。
「……名前のインパクトは一番強いのに」
トキオが背後で小さくつぶやいた。
そんな喧騒の中、キャプリ(やぎ座)は黙々とメモを取っていた。
「……本日、やぎ座が“公式十二星座”であること、確認……っと」
ヒカルは、そんな賑やかな朝を見守りながら、ひとこと。
「でも忘れないでくれ。“星座に序列などない”。どの星にも輝く意味があるのだから」
──その瞬間、校庭がぱっと静まり、全員の顔に光が差した。
「……いいこと言うねぇ、ヒカル校長」
「星、泣いちゃうよ〜」
しばしの静寂のあと、
「……それでも悔しいもんは悔しいんだけどな」
さそり座のスコルがぼそっとつぶやき、
笑いが弾けた。
今日も、ヒカリ校の空はにぎやかだ。




