第十二話 雷様、DJやるってよ
夜のヒカリ荘。
そろそろ寝ようかという空気の中、突如、ズゥゥゥンという重低音が鳴り響いた。
「なにこれ!? 地響き!? 地球割れた!?」
「いやこれ……音楽!? ビートがすごいんだけど!!」
星三兄弟が玄関を開けると、そこにはサングラスに雷マークのパーカーを着た男が、スピーカーとターンテーブルをセッティングしていた。
「Yo~~~~! ヒカリ荘のやつら、起きてるか~~!? 今夜は雷様フェス、開幕だぜ~~!!」
空のトラブルメーカー、雷様。通称「DJカミナリ」。
彼はテンション最高潮で夜空を揺らしていた。
「ちょ、待って待って待って待って! 寝るとこなの!」と月が眉をひそめる。
「せっかくの満月なのに、詩が聞こえない!」と叫ぶが、雷鳴にかき消された。
太陽が寝巻き姿で現れ、寝ぼけまなこで言った。
「おまえ……昼担当じゃなかったっけ……?」
「違う違う、オレは“雷”! 昼夜どっちでもOKな全天候型トラックメイカー!」
そして、いきなり自作の曲『曇天クラップ』を流し始めた。
ミラは手拍子しながら小声で言った。
「……でも、なんか、リズムだけはいいかも……」
「耳は爆音でも、心はちょっと元気になってる自分が悔しい」とトキオ。
「あと……地味に雷の音って、雨が降る予兆なんだよな」とヒカルがぽつり。
月がしばらく考えて、ため息交じりに言った。
「……一曲だけよ。それで、次は雲の上でやってちょうだい」
「マジ!? 月先輩、優しい!! 愛してる!!!」
その夜の空は、ごろごろと騒がしく、そして不思議と楽しかった。
翌朝。
ヒカリ荘には雷様からの置き土産として、手作りの「DJカミナリピンバッジ」が一個、そっと置かれていた。
月がつぶやく。
「……これ、夜の静寂を台無しにした代償としては、だいぶ軽いわね」




