第百二十三話 静かなる情熱、やぎ座の放送室
朝の星座学園。
校内放送室には、誰よりも早く登校したやぎ座・キャプリの姿があった。
「テスト明けの月曜日……みんなの気持ちが少しでも晴れますように」
小さくつぶやいて、ヘッドセットを装着する。放送委員の彼は、毎朝の“キャプリモーニング”と呼ばれる校内放送で、名物となっていた。
ジングルが鳴る。
『おはようございます、星座学園の皆さん。今朝も静かな光に包まれて、ここから始まる一日を……』
抑揚をつけすぎず、でも淡々としすぎない。言葉の間には、さりげない余韻。
「……今日のひとこと。“努力は、誰かに見せるためじゃない。自分のために、積み上げていくもの”。それでは、良い一日を」
* * *
放送を終えると、ふたご座のジェム&ジェナが現れた。
「ねえキャプリ、今朝の“ひとこと”、ちょっと泣きそうになった!」
「うんうん! 放送のときの声、いつもと違うよねぇ。落ち着いてて、惹き込まれるっていうか!」
キャプリは少し照れながら、眼鏡を押し上げた。
「ありがと。でも……ぼく、話すのはそんなに得意じゃないから。原稿、昨日の夜中まで直してたんだ」
「まじで!? 努力の権化じゃん!」
「てか“自分のために積み上げていく”って、キャプリのことじゃん!」
「……そうかな」
少しだけ、笑う。
彼の努力は派手じゃない。けれど、毎朝の“声”は、生徒たちの心を静かに支えている。
* * *
その日の昼休み。放送室の扉の前に、こっそり貼り紙があった。
《キャプリさんの放送、毎朝楽しみにしてます! がんばってください!(匿名)》
キャプリはしばらく貼り紙を見つめてから、そっとポケットにしまった。
「……明日も、がんばろう」
地道に、まっすぐに。
彼の静かな情熱は、今日もまた学園を包んでいた。




