第百二十一話 ふたりでひとつ、ふたごの舞台
星座学園の演劇部は、いつもにぎやかだ。
「ジェナ、台本のセリフ変えたのバレた?」
「いや、バレてないよ、ジェム。あれ、アドリブで通じてた!」
ジェムとジェナ、ふたご座のふたり。
どちらがどちらか、先生たちでも分からない。本人たちですら、時々入れ替わる。
* * *
今日は定期公演の最終稽古日。
ルナ先生が顧問として見守るなか、演目は“ロミオとジュリエット”。
「……って、どっちがロミオだっけ?」
「昨日は私だったから今日はジェナだよ」
「え〜、また私? セリフ覚えてるけど……顔がロミオ顔じゃない!」
「顔は関係ない。ロミオの心を演じるのよ!」
この調子で台本通りに進んだ試しがない。
* * *
「よし、最終リハ開始!」とルナ先生が告げると、ふたりは舞台に立った。
ロミオとジュリエット、まさかの――**ふたご演出**。
「愛してる、ジュリエット!」
「私もよ、ロミオ!」
「……と、私もよ、ロミオ!」
「ちょっと! ジュリエットがふたりいるのおかしいでしょ!」
観客役のペガがツッコミを入れた。
だがそれすらアドリブで回収。
「双子のジュリエット……なんて新解釈!」
「愛が倍! 愛が重い!」
* * *
リハーサル終了後、ルナ先生はぽつり。
「……たしかに感情は届いた。文法は破壊されたが」
演劇部は、今日も元気いっぱい。
台本なんて飾り。ふたりでひとつの、自由な舞台なのだった。




