第百十九話 ビリナ、書の迷宮へ
図書室――それは、おとめ座ビリナの聖域。
いつもと変わらず、静かに本を整理していたビリナは、ふと一冊の古びた本を見つけた。背表紙には金色の文字でこう記されていた。
《“知の扉を叩く者、心して読むべし”》
「……これは……?見たことない……」
パラッとページをめくった瞬間、風が舞い、部屋の中に光が満ちた。
――気づけばそこは、本でできた不思議な迷宮だった。
「まさか……本の中に、入ってしまった……?」
* * *
“知識の番人”と名乗るフード姿の人物が現れる。
「ここは“知の迷宮”。書の試練を越えねば、戻ることはできない」
「……面白いじゃない」
ビリナはペンを構え、挑戦を始める。
・“この学園で最も読まれている詩集は?”
・“ルナ先生が好む文体は?”
・“星々の神話の中で、双子座にまつわる物語は何通りあるか?”
すべての問いに、淀みなく正答を重ねていくビリナ。
「私は本が好き。文字の海に潜り、知の星を渡る……それが、私の呼吸なの」
* * *
最後の試練を終えた瞬間、再び光に包まれるビリナ。
気づけば元の図書室。あの古びた本はもう消えていた。
「夢……? でも、これは……」
ビリナの手には、一冊の白紙の本が残されていた。
表紙にはこう刻まれていた。
《“知の旅人・ビリナへ捧ぐ”》
「……これは、わたしの物語?」
そう呟いて、彼女はページをめくる。
そしてまた、静かに本棚を整え始めた。
図書室は今日も、静かな詩で満ちていた。




