第百十八話 スコル、静かなる反抗
星座学園ヒカリ校、午後の廊下。
風紀破りの常習犯、スコルの姿があった。制服のシャツは第3ボタンまで開き、靴はスリッパ、首にはイヤホン。
「おいスコル、また規則違反だぞ!」
風紀委員のペガが、マントを翻して追いかける。
「俺は……風に従って生きてるだけだ」
「風なんて関係ない!廊下は走るなって昨日も言っただろ!」
「……走ってない。これは……流れてるだけ」
「それ走ってるって言うんだよ!!」
* * *
そんなやり取りを遠くから見ていたトキオ先生は、溜め息をつく。
「またか……スコルって、なんでこうも規則を破りたがるんだろう」
ルナ先生がぼそり。
「さそり座のスコル。彼の星は、常に“反抗”と“孤独”を背負って輝いているのよ」
「かっこよく言ってもダメだってば!」
* * *
放課後、屋上。
スコルは一人、空を見上げていた。
「……別に、逆らいたいわけじゃない。決められた枠に……ただ馴染めないだけ」
そこへやってきたのは、意外にもミラ先生。
「スコル。風紀は、型に縛るためのものじゃない。みんなを守るための“目印”なんだよ」
「……そんなふうに、考えたことなかった」
「でもスコルは、自分の“カッコよさ”には真面目だよね。それ、悪いことじゃないよ」
スコルは一瞬だけ目を細め、そっとイヤホンを外した。
「……風、今日は優しいな」
「それ、聞こえてるよ?」
「言ってない。心が、そう言っただけ」
――風紀委員ペガの戦いは、明日も続く。




