表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/110

第十一話 虹、ひとやすみ

 ある日の昼下がり。ヒカリ荘に一本の“光の橋”がかかった。


「うぃーっす! にじ、参上〜☆」


 雲をかきわけ、ド派手な服ときらめく髪をなびかせたのは――七色の旅人、虹。

 雨と太陽の合い間だけに現れる、ちょっとレアでちょっとチャラい空の住人。


 「久しぶりじゃない」と太陽。


 「相変わらず、キラキラしてるわね」と月。


 「テンション高い!!」と星三兄弟が揃って目を丸くした。


 「いや〜、最近出番少なくてさ。映えるのに、一瞬しかいられないってつらいよね〜」


 虹は豪快に笑いながらも、ぽつりとこぼす。


 「みんなさ、“見えた瞬間に消える”ってわかってても、それでも見たがるじゃん?

  でもオレ、そういうの……ちょっとプレッシャーなんだよね」


 星たちが顔を見合わせた。


 「虹って、“儚い”って言われるけど……中の人はけっこうメンタルハードなんだね」


 「ていうか、存在するには“雨”と“太陽”がセットって、地味に大変じゃない?」


 「そう。だから毎回“出現条件”とか確認してから動いてるの。わりと天気予報ガチ勢なんだよね」


 月は静かに笑った。


 「たまには、何も気にせずここでぼんやりしていけば?」


 虹は照れくさそうに言った。


 「……そういうの、慣れてないんだけどさ。じゃあ今日は、消えずにちょっとだけ、いてもいい?」


 ヒカリ荘の空に、やわらかな七色の光がかかった。

 時間を忘れるような午後。


 “瞬間の美しさ”は、その裏でこっそり努力している。

 そんなことを、少しだけ思い出す日だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ