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第百二話 てのひらの宇宙
ある晴れた日の午後。
まひろちゃんは、庭でしゃがみこんで何かを見つめていた。
「……ここ、星がいるの」
その声に、あきらくんがハイハイで近づいてくる。
手には、小さなビー玉が握られていた。
「これは月ね。これは太陽。これは……星さん!」
まひろちゃんは小石と葉っぱを並べて、てのひらサイズの“空”をつくっていた。
「あきらくんも、どうぞ」
差し出された小石を受け取ったあきらくんは、それを口に入れようとして止められた。
「だめー! それ、ミラくん!」
どこで覚えたのか、ヒカリ荘のみんなの名前をぽつぽつと言うまひろちゃん。
あきらくんは言葉にならない声で、にっこりと笑った。
ふたりの目の前にある、ちいさな銀河。
そこにはプリンもなければカミナリも落ちないけれど、
やさしい時間が、ゆっくりと流れていた。
「……おそらって、てのひらにもあるんだね」
まひろちゃんはそうつぶやき、そっと手のひらを開いた。
その中には、小さな宇宙が、今日も広がっていた。




