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序章 空のうえでは、みんなちょっと不器用
空のずっと上。
青と黒のあいだ、朝と夜の境界に浮かぶ、とある小さな家。
名前は「ヒカリ荘」。
古びた雲の梁に支えられた、三部屋とテラスつきのシェアハウス。
見た目はボロいが、入居者はちょっと特別だ。
――太陽。
――月。
――星。
地上から見上げれば、ただの空模様。
でもこの世界では、それぞれに“名前”があり、“性格”があり、“ちょっとした悩み”がある。
たとえば、太陽は朝が得意すぎて、誰よりも早起きしてしまうし。
月は感情を顔に出さないけれど、たまにこっそり詩を書いてるし。
星たちは騒がしい三兄弟で、静かな夜を台無しにすることもしばしば。
完璧じゃないし、うまくやれてるわけでもない。
だけど、今日も空のうえで、それなりに仲良く暮らしている。
これは、そんな彼らの日常の記録。
……笑えるようなことばかりじゃないけれど、
読み終えたあとに、ふと空を見上げたくなるようなお話を――君に。