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第3話 海底へ

3話目です。よろしくお願いします。


 宇宙船内に入ったやよい(AI-841)は、コックピットの操縦席に座り操作をする。

 すると、宇宙船は約1000メートルを垂直上昇する。


 いくつかある目の前の浮遊タッチパネルから、目指す位置への入力を終えると、やよいは「発進!」と命ずる。


 マッハ20(時速で約24000キロ)でそのまま高度を維持した宇宙船は、1時間もしないうちに「テラ005」の北極点に着いた。


 高度をゆっくりと落し、海面まで30メートルの位置にまで宇宙船を下ろすと、やよいは再び上部の箇所を開けて、約1メートルほどの分厚い開いた幅の箇所に飛び乗り、しばし佇む。


「気温は22.6度。湿度は77.6パーセント。この惑星の地軸の傾きは約10度だから、白夜や極夜の期間は地球よりずっと短いようね」


 天候は晴れ。吹く風は強くはないが、やや生暖かく湿っている。

 眼下の海にも一切の氷がなく、流れは穏やかだ。


「今の『テラ005』の公転位置からすると、地球で言えば6月頃だから、白夜の時期か」


 確かに何時間といても太陽は、空から海の上を転がるように移動し、また空へと昇る。

 海への太陽の反射光が、太陽の位置により変わる。

 やよいは暫しこの太陽と空と海だけにも関わらず、ダイナミックに周囲の色合いが変化する、独特な美しさに見とれていた。


 ここでもそうであるが、途上でも空を飛ぶ生物は確認されなかった。

 休み場所である陸地が極めて限られているからか。

 飛ぶ存在はあの「ボルネオ島」の巨大昆虫群だけのようだ。


 やよいはコックピットに飛び降りると、上部の開けた箇所を完全に閉じる。

 当たり前だが、こうすると内部は完全な密閉状態だ。


「よし、海中捜査開始!」



 既に「テラ005」の表面の99%以上を占める海のデータは取得済みである。

 平均水深5000m。最大水深は13000m。

 どちらも地球より深い。


 宇宙船は北極点の海に突入し、約2000mほど潜る。


「この辺りは少し浅いようね」


 海底まであと500mほど。

 海底に達する。

 周囲は暗黒。やよいはコックピットの天井と壁と床を外部へのスクリーン状態にしている。

 

 海底と宇宙空間はこの様に類似している。

 宇宙船の形状が、どこか潜水艦や深海探査艇に近いのも、この類似さにある。


 闇の中にやよいの周囲に浮かぶ光は、操縦席の周りの浮遊タッチスクリーンと各種制御装置。

 その制御装置の中からある一つを操作すると、宇宙船全体が白く発光する。

 これで外部の様子が肉眼でもわかる。


 水深2500mだとプランクトンは存在できない。

 この箇所での海底で確認されたのは、何ら動きをしない単細胞生物だけ。


「先ずはこの水深で海中を回るか」


 北極点から、南へとこの「テラ005」を周回するように進み、南極点に達する操縦をする。

 そして、やよいは3D画像を操縦席の上部に浮かび上がらせる。

 直径1メートルほどの「テラ005」の球体。

 この中で体長10センチメートルを超える生命体が確認されたら、その箇所が点滅する一種の魚群探知機だ。


 また、別の浮遊スクリーンでは海底の下。

 つまり、「テラ005」の地殻やマントルの図も映し出す。


「地球ほどではないけど、海底火山はそれなりに活発か。けど、ずっと深いから島を形成するほどの火山はないようね」


 周囲の浮遊スクリーンや3D画像、そして各種制御装置を確認しながら、外部を映しているスクリーンも並行で確認して、やよいは操縦桿を操る。



 すると、3Dの魚群探知機がある箇所で点滅を開始する。

 やよいは操縦桿でもって、その箇所と深さへと宇宙船を高速移動させた。


 仮に最初に着陸した北緯がほぼ0度の「ボルネオ島」の山頂を東経0度0分としたら、北緯34度東経115度辺りの箇所である。(おおよそ「ロサンゼルス」の辺り)

 水深は約300mほどなので少しずつ浮上しながら進む。


「うわぁ……」


 感激の声を発するやよい。

 宇宙船の発光状態を一旦停止する。


 そこには、キラキラと光るクラゲのような生き物が何百万匹と連なり、回遊魚のようにふわふわと進んでいた。

 やよいの宇宙船を気に留めるでもなく進むので、天敵らしきものはいないのか。

 だとすれば、この「テラ005」の海中である程度の大きさの生物は、このクラゲのような生き物だけと断じていいだろう。


 あと可能性があるとすれば、この連なる彼らの個体から排泄される物や、プランクトンの死骸を捕食する、深海魚のような生き物がいるかも知れない。


「おっと、美しさに見とれてないで、データを採らないと」


 やよいはデータ収集用の浮遊タッチパネルを操作し、宇宙船外からカメラのようなものが飛び出て、このクラゲのような生き物をスキャンして細胞や体組織のデータを取得する。


「バイバイ、クラゲさんたち」


 やよいは徐々に宇宙船を沈め、これらの海底へ沈む有機物を捕食している可能性のある生き物を探し始める。

 暫くすると、魚群探知機に反応が出る。


「やっぱりいた。けど、数はずっと少ないね。ここまで沈むまでに大半は溶けてしまってるからか」


 先程のクラゲのような生き物は、体長20センチメートルほど。

 現在、深海3000メートルの海底だが、甲殻類のような姿をベースとした生き物が数十匹確認された。

 体長は一番小さいものでも40センチメートルは超える。


 こうして北極点から南極点に進むことを、各水深で数回行い、やよいは宇宙船をボルネオ島へと戻す。

 これら以外にある程度の大きさの海の生物は見つからなかったからだ。

 このように、やよいはこの島を「テラ005」の調査の拠点としていた。


第3話 海底へ 了



おまけ:宇宙船でやよいが海中捜査をしているイメージイラストです。

挿絵(By みてみん)

次で最後です。

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