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第38話 雪が降る頃
それから月日が経った。
雪がしんしんと降り積もり、温泉街は静寂に包まれる頃。
僕は、ようやくSNSを開けるようになった。
あれからも工房のHPは更新していたけれど、美紗ちゃんと僕の思い出であるSNSを見にいくのは止めてしまっていた。見たら、あれがある。それがわかっていたから。
耐えられる自信も勇気も、なかった。
意を決して開く。
『碧の軌跡』には、たくさんの「いいね」とコメントがついていた。
「いいね」がひとつ、またひとつと増えていっていた。
けれど、そこに僕が本当に待っていた、たったひとつの通知を見つけた。
見慣れた名前。
『ガラス、見たよ。すごくきれい。
病室の窓辺に、花束を飾ってるよ。
朝日が当たると、本当に夏の光が閉じ込められてるみたい。
ありがとう。
今は治療をがんばってる。
でも、また必ず戻ってくる。
そのときは、次の作品を一緒に作りたいです。』
胸の奥がじんわりと熱くなった。
僕はしばらくスマホを握りしめていた。
画面の向こうに、確かにいる。そのことが、今は何よりも心強かった。




