第26話 はじめての
夕暮れ時、工房に残った最後の光が、完成した花びらたちを照らしていた。
「できた……」
僕は息を整え、三十枚の花びらを丁寧に並べた。
一枚一枚の花びらは、薄さが均一ではない。
炎の中で形作られた縁は、自然の花のように微妙に波打ち、
光を通すと、内側に閉じ込められた気泡が小さな星のように輝く。
青から紫へと変わるグラデーションは、
美紗ちゃんが好きだと言っていた夕暮れの海の色を思わせる。
花びらを五枚ずつ組み合わせ、一輪の勿忘草を形作っていく。
中心には、黄色いガラス玉を置き、
花の芯を表現した。
茎の部分には緑のガラス棒を炎で熱し、
しなやかな曲線を描くように曲げていく。
葉は薄い緑のガラスを、実物より少し小さめに作り、
茎に三枚ずつ取り付けた。
「あとは――」
五本の花を一つの束にまとめ、
透明なガラスのリボンで結ぶ。
リボンの結び目には、小さなガラス玉を一粒、
露の雫のように添えた。
最後の仕上げに、花束全体に薄くガラスのコーティングを施す。
これで、どんなに時間が経っても色褪せることはない。
「完成だ。僕が始めて、0から作ったガラス作品……」
窓の外は既に暗くなり始めていた。
美紗に渡したら、どんな顔をするだろう。
そう思いながら、僕は完成した花束を持って、光に照らしてみた。
ガラスの花束は、わずかな光を集めて青と紫の優しい輝きを放っている。
花びらの縁が光を屈折させ、
工房の壁に小さな虹を描いていた。




