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ネオス・パンゲア怪異ファイル   作者: 芦田メガネ
第1章 アジア編

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悪意と母性

 どうにかロック鳥の風切羽をぶった斬ることができた。これで無力化できたと思ったのも束の間、新たな問題が浮上する。


 空中に居るロック鳥。空中に居るために必要な風切羽。それを失ったらどうなるか。それは当然───



「ははッ。やっべ。忘れてたぜ」

「俺も今気付いた。これ……」

「あぁ………」













「「落ちんじゃん!!!」」








 せっかく殺さずに無力化したというのに、ロック鳥と言えど真っ逆さまに岩肌に落ちてしまったら致命傷を負いかねない。そうなってしまったら、今までウォルターさんや、廻原に冬美が紡いできた全てが水の泡になってしまう!それだけは……それだけは阻止しなくてはならない!



「廻原、おぶされ!」

「わ、わかった!」


 廻原を支えていた縄を解き、自力で俺にしがみついて貰う。こうして稼働できる縄が6本に増えた。その6本をロック鳥の身体に絡ませる。そして、衛星をフルパワーで稼働させてどうにか減速させようとする。だが…………


「クッソぉぉぉぉぉぉぉぉッ!止まれやァァァァァァァァァァ!」



 予想以上にロック鳥の身体は重く、ほとんど減速していない。いくら最新鋭の反重力装置と言えどもここまでの負荷は想定されていないのだろう。だが、どうにか止めねば。どうする。何をすればいい?


「先輩!アタシも手伝いますッ!」

「フユミちゃん!?」

「す、すまねぇ!助かるぜ」


 冬美も加勢し、廻原におぶさった。これで衛星は9機。少し減速したが、依然として致命傷を負いかねない程の速度で落下している。このままじゃまずい。意味があるか分からないが、全身の力を込めて踏ん張り続ける。


「止まれぇぇぇッ!止まってくれぇぇぇッ!」

「このままじゃッ!」

「だ、誰か……」



 絶望しかかったその時だった。突如として猛烈で暖かな風が、舞い散る風切羽根とともに山肌から吹き上げてきた!その風に押し上げられるようにして、俺たちだけでなくロック鳥の巨体もふわりと浮かんで減速する。


「こ、この上昇気流はッ!?」

「なにこれ!?すげーッ!」



 そして、インカムに通信が入る。

「みなさん、無事ですか!?」

「ま、真衣!?」

「全員、無事だぜ!」

「なぁ、もしかして、これ、お前がッ!?」

「さすが、武縄先輩、ご明察です!地上に降りて頂いてからその辺は説明しますね」



 そして風は徐々に弱まって行き、ロック鳥と俺たちはふんわりと山肌に降り立った。地に足をつけた瞬間、気の緩みの所為か折れた足に鋭い痛みが走り、思わず顔を歪める。


「いってて...」

「大丈夫か?」

「あぁ、こんくらいなら我慢できる…」


 血がぐじゅぐじゅと滲み出てくる足をさすりながらヨタヨタと真衣とウォルターさんの元へ歩を進める。


「ごめん、助かった。ありがとう。ウォルターさんも、ありがとうございました」

「これくらい、お安い御用さ」


 ウォルターさんは汗をダラダラと流して足をガクガクとさせていたが、サムズアップしてニッコリと笑った。


「私こそBOBさんのアドバイスがなければ、動けませんでしたから。それより、みなさん大丈夫でしたか?」

「なんとかな。でもとりあえず、巣に向かう前に怪我の処置をしたい」

「了解です」










 各々、怪我を治している間に俺は真衣に問いかける。

「さっきの上昇気流、すごかったじゃないか。どうやったんだ?」

「あれはですね。熱上昇気流ってものでしてね。これを使って生み出しました」


 真衣はそう言うと真っ黒い四角い塊を懐から取り出した。ところどころ焼け爛れたように表面がでこぼこしている。


「これってモバ充か?」

「そうです。これを私のエネルギー操作で発火させました。それによって産まれた熱エネルギーを使って熱上昇気流を発生させ、それを更に操作してロック鳥を受け止められるまでの巨大なものへとしました」

「なぁるほどねぇ…」


 いやはや、驚いた。真衣の能力はそれほどまでに強力なものだったとは。あの巨体を支えられるほどのエネルギーを自在に操れるとなると、とんでもないポテンシャルを秘めている可能性が高い。俺や彼女が気付いていないような使い道がまだまだあるはずだ。鍛えあげれば師匠を超えるような最強の戦士になり得る。


「いやぁ、でもかなり疲れますよ」

「だろうな」

「単純にエネルギーを操るだけなら簡単なんですけど、今回はあれほど大きなロック鳥の身体を支えなきゃならなかったんで、私自身のエネルギーもかなり放出して、熱上昇気流を作らなきゃならなかったんですよね」

「あー、そりゃキツいわな」

「だったら、今度、アレック…、あー、俺の友達のエンジニアに頼んでなんか作ってもらうか。外付けのエネルギー保管庫みたいなやつ」



 すると、真衣は少し首を傾げた後に納得したような晴れやかな表情を見せた。

「あー!もしかして、倉浜さんのことですか?」

「なんだ、知ってたのか?」

「えぇ、実は先輩方がいらっしゃらない間にサポートアイテムの制作を依頼してたんですよ。あぁ、冬美ちゃんも一緒に。それがこれです」


 そう言って取り出したのは先程の戦闘で使用した拳銃型のアイテムだ。弾倉部分にモバイルバッテリーが入るようになっている。


「その名も『エレキガン・プロトタイプ』です。これまでのモバイルバッテリー単体とは違い、照準が合わせやすくなりました。シンプルですが、なかなかに便利です」

「ほー、名前はシンプルでアイツらしいが、なかなかイカしたブツじゃねーか」

「見た目もそうだな。旧ソ連の『トカレフ TT-33』に酷似してる。アイツ、アウトロー映画好きだからなぁ」


 アレックは古い時代の映画を好んで観ていた。俺たちも学生時代は放課後や休日にアレックの家で映画をよく見せて貰っていて、それがきっかけで俺たちは映画好きになった。今でも、アイツが作るアイテムのデザインにはそういった映画の片鱗が顔を覗かせている。




「なんだ、お前たち、楽しそうな話してるじゃんか」

「あ、ウォルターさん!お加減はいかがですか?」

「だいぶ薬が効いてきてな、まだ少し両足が痛むが任務に支障はない。お前こそ大丈夫か?派手に足が折れてたように見えたが」

「ええ、まぁ。ちぎれた足を骨に刺してたせいで、まだ激しく痛みますが、歩けない程ではないです。痛み止めも打ちましたし、私も任務に復帰できそうです」

「そうか、じゃあ、ロック鳥の様子を確認したら、引き続き巣を目指すぞ」

「了解です」



 俺たちが撃墜したロック鳥、近付いてよく観察してみたが、足が折れているのと、風切羽が全て斬られていることを除けばほぼ無傷だった。やはり、神に近い生物というだけあって頑丈だ。地に伏せてはいるが、目だけで俺たちのことをキョロキョロと観察している。


「手荒な真似をしてすまなかったな。俺たちはアンタが暴れた原因を調べに来ただけなんだ。今治療してやるから大人しくしてろよ」


 俺たちはロック鳥の折れた足を正しい位置に戻してやってから大型生物用の治療薬を投与してやった。ロック鳥はその間、悲痛な声を上げたものの先程とは打って変わって大人しくしていた。どうやら人語を理解できるらしい。

 この大きさの生物なら、おそらく一晩安静にしてれば全快するはずだ。俺たちはそっとその場を離れて山頂にある巣に向けて再び歩き始めた。








 ズキズキと痛む足と、疲労困憊の身体に鞭打ってやっとこさ山頂にたどり着いた。山頂には大きなクレーターのようなものがあり、そこに藁や木材などが敷き詰められていた。おそらく、これがロック鳥の巣なのだろう。

 すっかり疲れきっていた俺たちは無言で巣の調査を始めた。もはや言葉を発する気力は残っていなかったが、使命感のもとひたすら巣を細かく観察した。


 まず、巣の中央を見る。そこには柔らかな干し草、ロック鳥の羽根、そして柔軟性の高い木材で構成されている。そして、外周に向かって獣道のように跡がまっすぐ付いていた。その跡を辿ってみると、その周辺にも不自然に折れた枝や、小さな窪みなどが見て取れた。嫌な予感がする。


「これは、まさか…いや、そんなはずは…」

「あぁ、前例がない。でも、それしか考えられん」

「とりあえず、アンドリュース博士に連絡をとってみます」


 俺は急いでアンドリュース博士に電話をかける。ワンコール目が終わる前に博士の声が聞こえてきた。


『はい、もしもし』

「お疲れ様です、博士。武縄です」

『なるほど、今電話をかけてきたということは、そういうことかな?』

「ええ、今、ロック鳥の巣に来ています」

『そうか、君は察するにかなり賢い部類の人間だろう?もう答えは出たんじゃないかな?』

「そこまで賢くありませんが、何となく察しましたよ。今回の事件、原因は…」


「ロック鳥の卵が盗まれたこと、ですよね?」





 自分でもありえないと思う。資料にはロック鳥の卵が確認された事例はないと記載されていた。さらに言えば、繁殖をするにはツガイが必要になる。とすると、もう1羽ロック鳥がいることになってしまう。無精卵という線もあるが、いずれにせよ前例が無い。

 だが、よく考えれば辻褄は合うかもしれない。そのヒントになったのは、ウォルターさんが猫から聞き出した別の匂いの存在だ。刺激的な甘ったるい香り、これは恐らくロック鳥が出したフェロモンの類いだろう。そして、別のなにかはオスの匂い。ロック鳥が島の外でまぐわって来て、ここで産卵をした、そういうことなのだろう。

 そして、どうやらこれは正解だったらしい。博士は答えた。


『そう。ロック鳥の卵が何者かに盗まれた。そして、それを取り戻すために船を破壊した。それがこの事件の真相だ』

「だったら、何故最初からそう言わなかったんです?そう言ってくれれば、警察の捜査の段階で解決してたかもしれないのに」

『それは、その、すまなかった。だが、これには2つ理由がある。1つ目はまだ論文ができていないから。正式に論文を発表するまでは内密にしたかった。そして、もう1つの理由は、その卵が有精卵だったからさ』



 俺たちは顔を見合せた。恐ろしい予感が的中してしまったからだ。


「事実なんですか?」

『事実だよ。我々調査団がこの目で確認した。写真や動画も残ってる』

「だとしたら、確かに警察には言いにくいですね」

『だろう?有精卵ってことはツガイがいることになる。あんなバカでかい鳥がもう1羽いることがわかったら世間は混乱に包まれる。正式な研究結果を正式な論文にまとめて、安心できる状況にするまでは内密にしたかったんだ』



 正論だ。警察に伝わってしまえば会見でその話が出かねないし、仮に内密にするように約束しても、博士と警察のやり取りを聞いた誰かが噂を広めかねない。


「では、我々5人で何とかしてみせます。ですが、卵を取り戻した際はどうしても人目に触れることになる。ですので、それまでに会見の準備をして貰えますか?迅速に正確な情報を発信する必要がありますから」

『無茶言うね。でも、それが最善策か。わかった。いつまでに済ませればいい?』

「明日の夕方までに。犯人の目星はついてますからね」

更新が大変遅くなり申し訳ございません。

就活で時間がなかなかとれず、長引いてしまいました。

一刻も早く内定をゲットして、更新のための時間を作りたいので応援よろしくお願いいたします

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