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ネオス・パンゲア怪異ファイル 〜平凡な能力者、怪異と悪意をド根性と友情パワーでぶっ飛ばす〜  作者: 芦田メガネ
第1章 アジア編

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任務の基本

今回のお話は石川県加賀市の実際の地図を見ながら読むとさらにお楽しみ頂けるかと思います。

是非、こちらのURLから地図を開いてみてください(Googleマップに繋がります)


https://maps.app.goo.gl/CyzwD4CeRaawK9Sb9?g_st=com.google.maps.preview.copy


 俺たちはカガ地区市街地の中心付近のコインパーキングに車を駐めた後、この後の流れについて喫茶店で話し合うことにした。

「さて、今回のターゲットである火取り魔だが、民家に出没することが多いみたいだな。さて、新人たちに質問だ。お前らなら、どうやって火取り魔を探す?」


 少し考えて、まずは冬美が答えた。

「まずは、被害に遭った家の人に聞き込みに行きますね。火取り魔の出没にどんな傾向があるのか調べるべきッス」

「うん、正解だな。だが、これだけでは不十分だ。真衣、お前はどうだ?他に何をすべきだと思う?」



 真衣も考え込んでから答えた。

「そうですね・・・。確か出没したのってカガ地区の川沿いの地域なんですよね?」

「そうだな。資料にもそう書かれてる。伝承でも橋の近くで出没するって言われてるし」


「であれば、川沿いの地域で尚且つ橋の近くの建物に住む人に協力を要請します。火取り魔によるイタズラが発生したと思ったら、すぐに私たちに通報するように頼んでみるというのはどうでしょう」


「正解だ!火取り魔は実体を持つのか不明だからな。被害が起きるまで見つけることはほぼ不可能に近い。であれば早急に対処する必要がある。そのためのネットワークを準備することが必要だ」




 注文していたコーヒーが人数分運ばれてくる。俺と冬美はブラックで、廻原は砂糖を大量に、真衣は少しだけミルクと砂糖を加えてそれを飲む。そして、これからの動きについて相談する。


「恐らく、火取り魔が出てくるのは夜だろうな」

「なんでッスか?」

「伝承では橋に近づいた人間の提灯にイタズラするって言われてるだろ?提灯を使うのは当然、夜だからな」

「たしかに」


「というわけで、夜までは聞き込みと協力の要請をしよう。万が一、火取り魔と遭遇したときのために2人1組で行動しよう」

「だな。組み分けはどーする?」

「新人2人だけで行かせるのは俺としては不安だ。実力はすごいが現場でのノウハウが無い。聞き込みや協力要請とかのやり方を含めて指導をしていきたい。というわけなんだが、お前らはそれでいいか?」

「はいッ!アタシとしても先輩からいろいろ教わりたいッス!」

「私もです。現場での経験は無いに等しいので少し不安です」

「決まりだな。じゃあ、組み分けはグーパーで決めよう」



 そこで、俺と廻原、冬美と真衣でグーパーをした。結果、俺と真衣がグー組、廻原と冬美はパー組になった。

「なんか、性格的にもちょうどいいんじゃないか?」

「たしかに。コースケとマイちゃんは冷静沈着な方だし」

「廻原と冬美は元気で活溌だしな」

「よし、じゃーこれで行こう。また集合するか?」

「いや、任務が終わるまでは集合はしなくていいだろう。無線とか電話で連絡取れるし、別行動で問題ないはずだ。というわけで、この店を中心に南は俺たちグー組、北はお前らパー組に任せる」


 どうやら廻原はこの配置から何かを察したようだ。新人2人は何も気付いてなさそうだが。

「OK牧場。じゃー気を付けてな」

廻原はバイクに2人乗りをして、川沿いの住宅地に向かって走り去って行った。

「さて、俺たちも行くか」

「はい!お願いします!」




 俺たちは再び車に乗り込んだ。そして、俺は真衣にある質問をする。

「真衣、なんで俺が自ら南側を担当すると言ったか、わかるか?」

「え?なにか理由があるんですか?」

「1つは、カガ地区の南側はほとんど山だ。現在は()()()()()()()()住宅がない。火取り魔以外にも、妖怪が出やすいからな。そのため、南側の住宅地は市街地と山の麓に集中している。つまり、聞き込みが楽だ」

「え、なんかセコい・・・」

「それだけじゃない。南側には伝承の地、さっき言った()()()()でもある『こおろぎ橋』がある。つまり、1番出やすいのさ、火取り魔がな」



 真衣は慌てて資料を確認し始める。

「本当だ・・・。北側にも被害は出てるけど、南側、それも山に近い地域が特に被害報告が多い・・・」

「資料に目を通すってのはこういうことだ。ただ資料を流し読みしてわかった気になるんじゃなくて、複数の視点から情報を拾い上げて分析する。これが任務の基本だ」

「なるほど!でも、それならなんで廻原先輩たちを北に向かわせたんですか?みんなで火取り魔を退治しにいった方がいいんじゃ・・・」


「思い出してみろ。火取り魔は『エネルギーを操る妖怪』だ。それも、実体が無い可能性が高い」

「あッ!じゃあ、もしかして・・・」

「気付いたか。これが3つ目の理由。火取り魔に対抗できるのは恐らく真衣、お前だけだ。廻原の能力でも冬美の能力でも、火取り魔にダメージを与えられる可能性は低い」


 真衣はキラキラとした眼差しで俺を見つめてきた。

「先輩、そこまで考えていたんですね!さっきはセコいって言ってしまい、すみませんでした!」

「いや、いいんだよ。でも、これでわかったよな?任務における作戦の立て方が」

「はい!」



 だが、少しして真衣は俺に尋ねてきた。

「でも、先輩、もし北側に火取り魔が出現したら、どうするんですか?」

「それも大丈夫。忘れたか?俺の車は空を飛べる」

「あ、そっか!じゃあ、すぐに向かえるってことですね」

「そういうこと!だからこそ、俺たちはリスクが高いところに行くってわけよ」




 そうして、俺たちは1つ目の川沿いの住宅地へと到着した。北より少ないとは言え、かなりの数がある。

「ちんたらしてると日が暮れちまうからな。なるべくサクッと終わらせたい。最初の20軒くらいは真衣も一緒に行こう。それで、聞き込みと協力要請のやり方を覚えて、そこからは別行動だ」

「わかりました」

「スマホに共有の地図アプリがあるだろ?そこに、訪ねた家チェックしくれ。終わったら、また車に乗って次の住宅地に向かう」

「了解しました!」

 


 そういうわけで、俺たちは聞き込みと協力要請を開始した。住民に俺たちの通報用の番号を渡し、聞き込みをする。被害があった家もまばらにあったため情報はいくらか手に入ったが、ほとんど資料の内容と同じだった。その後も、住宅地を巡りひたすら聞き込みを繰り返した。




 そして15時、昼飯も食べずに聞き込みをしていたため、俺たちは一休みするためにファミレスに入った。

「なかなか終わらないですね・・・」

「まぁ、それでも残り3カ所巡るだけだ。夜には間に合うだろうよ」

「だといいんですけどね・・・」

「それにしても、ホントよく頑張ってるなぁ。俺が新人の頃はこんなにスムーズには行かなかったぞ」

「そうなんですか?」

「あぁ。それに比べたら、めちゃくちゃ優秀だ」

「えへへ、ありがとうございます!いつか、先輩たちが新人だった頃の話も聞かせてくださいよ!」

「・・・うん、そうだな。いつか、な」



 程なくして、注文した料理が運ばれてきた。俺はハンバーグセット、真衣はフルーツがたくさん乗ったパンケーキだ。真衣は大きく口を開け、美味しそうにパンケーキを頬張る。実に気持ちの良い食べっぷりだ。俺もおごり甲斐がある。まぁ、ファミレスだしそんなに高くないから威張れるようなものでもないのだが。でも、やはりこういう人と飯を食えるってのはやはり良いものだ。




 店を出た後、俺たちは聞き込みを再開した。そして、最後の住宅地で聞き込みをしているときだった。空がぼんやりと赤く照らされた黄昏時、真衣から突然電話がかかってきた。

「もしもし、俺だ。どうし・・・」

「もしもし、武縄先輩!大変です!で、出ました!火取り魔!」

「へ!?なんだと!?」

地図アプリの真衣の座標はこおろぎ橋から700mほど離れた場所にある民家を指し示していた。

「わかった!すぐに向かう!無理はするなよ!」

「は、はい!」


 幸いにも俺の現在地からそう遠くない。俺は空中に待機させていた車を呼び出し、急いで現場に向かった。

今回もお読みいただきありがとうございました。

次回もよろしくお願いいたします。

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