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ネオス・パンゲア怪異ファイル 〜平凡な能力者、怪異と悪意をド根性と友情パワーでぶっ飛ばす〜  作者: 芦田メガネ
第1章 アジア編

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新人たちの初任務

 俺と廻原は朝の7時に早川上官から呼び出された。

「おはようございます、早川上官。どうしたんですか?こんな朝っぱらから」

「そーですよ。まだ新人ちゃん達来てないじゃないですか」

「おはよう、2人とも。だからこそ、朝早く呼んだんだ」


 早川上官はパソコンの画面を見せて来た。なにやら任務にまつわる資料のようだ。

「彼女らの初任務はこの2つのうちのどちらかにしようと思ってる。1つは日本エリア、もう1つは東南アジアエリアだ。どっちがいいと思う?」


 なるほど、俺たちが実際に彼女らと戦ってその実力をよく知ってるから、俺たちの意見を聞いて適切な任務を与えたいというワケか。とはいえ、任務の内容を見ると、どちらも同じくらいの難易度に見える。

「どっちも難易度的には同じなんで、近場の日本エリアでいいんじゃないですか?やっぱり、初任務は疲れるでしょうし、早く帰れた方がいいでしょう」

「俺もそー思います。遠くの場所だと移動だけでも疲れますし」

「なるほどな。わかった、ありがとう。じゃあ、彼女たちが来たら日本エリアでの任務を言い渡すことにする。お前らはそれまでゆっくりしててくれ」




 新人たちは恐らく始業時間の8時頃に来るだろう。そこで、俺たちは休憩室でカードゲームをして待つことにした。昨日、廻原の能力を説明するためにカードゲームを引き合いに出したらやりたくなってきたからだ。


「カマスでダイレクト。通る?」

「チクショー、通るよ」

「はい、対ありね」

「対あり。コースケ、お前は相変わらずメタビート戦略好きだな」

「一番好きな戦略ってワケじゃあないけどな。お前に勝つために使ってる側面がデカい。ホントはカウンター系が一番好きだけど、お前の戦術とは噛み合わねェ」

「なるほどね〜。お前、散々ロマンロマン言ってる割には、こういう時だけ現実見るんだな」

「なんだと!?いいぜ!わかった!もう1回やろう。今度はカウンター系使ってやるよ」

「よし!乗った!お前のロマンを打ち砕いてやる!」


すると、休憩室に早川上官が入ってきた。

「盛り上がってるところ悪いが、新人2人が出勤したぞ。司令出すから事務所に来い」




 いつの間にか8時になっていた。俺たちは仕方なく後片付けをして事務所に向かう。

「おはよーございますッ!!先輩ッ!」

「おはようございます!」

「おはよう。朝から元気だねぇ」

「おはよ〜。元気なのはいいことよ」

冬美に関しては元気、というか騒々しいな。まぁ、やる気は存分に感じられるから良し。真衣はちょうどいい元気の良さだ。清々しい気分になるいい挨拶だ。


「よし、全員揃ったな。じゃあ、新人2人に初任務だ!よ〜く聞いておくんだぞ」

「はいッ!」

「はい!」

「うん。いい返事だ。では任務について説明する。今回、お前らにはイシカワ行政区のカガ地区に行ってもらう。ここからそう遠くはないから、デビュー戦にはちょうどいいだろう」



 俺たちが提言したことは内緒にしとくらしい。

「ターゲットは『火取り魔』と呼ばれる妖怪だ。ここ最近、カガ地区の川沿いの地域の民家などで明かりが急に消えたり、かと思えば急に眩しいほど明るくなったり、さらにはガスコンロの火が勝手に小さくなったり、大きくなったりと様々なイタズラをしているようだ。下手したら火事にも繋がる危険性がある。捕獲、または討伐をしてきてくれ。以上だ。詳しいことは資料を確認してくれ」

「了解ですッ!」

「了解しました!」

「「了解ッ!」」





 さて、俺たちはとりあえずニイガタ支部を後にしたワケだが。

「移動手段、どうするよ?」

「電車もそれなりに高いしな〜」

「アタシはなんでもいいッスよ!」

「私もあまり詳しくないのでおまかせします」

「うーん・・・じゃあ、俺の車で行くか。空飛べるし、電車よりちょっと速いよ」

「え!?先輩の車って飛べるンスか!?」

「確か、超高級車にしか付いてない機能ですよね?」





 以前、彼らが時計泥棒を追跡するときは当たり前のように空を飛んでいたが、これだけテクノロジーが発展した2400年代でも空飛ぶ車は超高級品である。ほとんどの場合、公用車や公共交通機関、そして金持ちのマイカーくらいにしかフライトモードは付いてない。





「俺の車は市販のものじゃないからね。怪防隊の本部にエンジニアの友達がいて、ソイツが作ってくれたんだ。友情価格で安くしてもらった」

「人脈って大事ッスね・・・」




 そんなワケで、俺の車を停めてる自宅近くの月極駐車場にやってきた。

「これが俺の車、トヨタ・オーリスだ。もっとも、遺されていたデータをもとに復元した模造品だけどね」

「めちゃくちゃカッコいいッスね!」

「ありがとう。さ、乗った乗った!」


 廻原は助手席に、新人2人は後部座席に乗り込む。そして、俺はエンジンを起動した。すると、いつもの騒がしいアイツも目を覚ます。

「Hey!ブラザー!調子はどうだい!?」

「ぼちぼちだ。早速だがBOB、フライトモードを起動してくれ」

「Okay, guys!しっかり捕まってろよ〜」



 フライトモードが起動し、タイヤが横向きに倒れる。タイヤに取り付けられた反重力装置が作動し、車が空に舞い上がった。

「ところで、ブラザー。後部座席のかわい子ちゃん達はガールフレンドかい?」

「違ぇよバカ。俺たちの後輩だ」

「はじめまして!アタシは薬師丸冬美ですッ!

よろしくッス!」

「私は源川真衣です。よろしくお願いします」

「俺はこの車のAI『Brilliant Operation Bot』だぜ!BOBって呼んでくれよな!よろしく頼むぜ〜」


 俺はとりあえずBOBに運転を任せ、みんなで渡された資料の確認をする。






────火取り魔、古くから石川県加賀市に伝わる妖怪。もともとは、こおろぎ橋という橋の近くを提灯を持って通ると火が吸い取られたかのように急に小さくなり、そして一定の区間を通り過ぎるともとの大きさに戻る、という怪奇現象であった。そして、怪奇現象であったため具体的な姿はもともと無かったワケだが、江戸時代に浮世絵師の山東京伝(さんとうきょうでん)が描いた、上半身は炎で下半身は着流しという姿の絵が世間に定着し、現在もこの姿の妖怪として出現している。


 では、なぜもともと提灯の火を小さくするだけの妖怪が、電気や都市ガスにちょっかいを出すようになったのか。これには理由がある。それは平成に放送されたとあるアニメにある。この作品に登場した火取り魔は電気やガスなどの現代のエネルギーを吸収して力を蓄えて主人公に襲いかかった。おそらく、このエピソードにより火取り魔に対する世間のイメージが更新され、「エネルギーを操り吸収する妖怪」として現れるようになったと考えられている────






「先輩。なんでアニメのエピソードによって妖怪の性質が変化したんですか?」

「あぁ、これにはまだ明確な理由が出てないけど、一番有力な学説があってな。俺たちが戦う妖怪や怪物は人間の恐怖やイメージによって誕生していると言われてるんだ。小惑星にウイルスかなにかがくっついていて、それが人間のイメージを学習して妖怪を生み出しているって考えられてる。だから、アニメやゲームによって多くの人に植え付けられた新たなイメージが現在の妖怪になってるってこと」


「そんなに人間のイメージって急に変わるモンなんスかねぇ」

「まぁ、アニメが放送されてから400年くらい経ってるからな。それくらいあれば人間のイメージなんていくらでも書き変わる。口頭伝承とかにそのアニメのエピソードの一部がしれっと紛れ込んで、それが最初からあったものとして広がって行ったんだろうな。ウワサに尾ひれが付いて壮大な話になるのと同じさ。神話とかもそういうものだしな」

「なるほど・・・・」




 そんなことを話しているうちに、イシカワ行政区カガ地区の上空までやってきていた。

「よし、着いたな。もうすぐ任務が始まるぞ。2人とも、準備は良いな?」

「もちろんッス!」

「バッチリできてます!」

「よし、行くぞ!」

「「はいッ!」」

今回もお読み頂きありがとうございます。

感想や評価などいただけたら非常に励みになりますので、どうかよろしくお願いいたします。

次回もお楽しみに。

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