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ネオス・パンゲア怪異ファイル 〜平凡な能力者、怪異と悪意をド根性と友情パワーでぶっ飛ばす〜  作者: 芦田メガネ
第1章 アジア編

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超能力発表会

「先輩方、ちょっと容赦無さすぎッスよォ〜!」

「それはお互い様だろ」

「そーだな。2人ともえげつなかった。おかげでこちらも相応の手段を選ばなきゃならなかった」




 俺たちは2人の歓迎会のために怪防隊の食堂にやって来ていた。明日から通常業務であることと、医務室での治療が長引いてそれなりに遅い時間になってしまったこともあり、ここで行うことになった。


「マイちゃんなんか、ものすごいリバースしちゃって、ねぇ?」

「は、はい。お見苦しいところをお見せしてしまい、本当にすみません・・・」

「いやいや、こちらこそ、やりすぎてしまって申し訳ない。というか冬美、リバースしたのは俺も同じなんだけど」


 冬美の毒は本当に凄まじかった。二度と喰らいたくない。

「あの毒?ヤバすぎるって。アレが超能力なんだよな?」

「そうッスね。これがアタシの超能力『毒手』ッス」

「毒手、か。確か中国拳法の禁術だったよな?」

「元々はそうッスね。アタシのおじいちゃんは少林寺拳法の道場をやってて、たしか、ひいひいひいおじいちゃんが禁を破って毒手を極めたらしいんスよ。それが隔世遺伝的にアタシのもとにやって来て超能力として備わった感じッス」




 毒手、本来は虫や植物など自然由来の毒を調合し、それを手に染み込ませて完成させるもの、と言われているがその詳しい実態は不明。だが、その修行は耐え難い痛みを伴うと言われている。




「毒手って手が日常生活では使い物にならなくなるって聞いたことあるけど、大丈夫なん?」

「アタシの場合は大丈夫ッス。必要な時に汗腺から化合物が混じった汗が出てくるシステムなので。特に痛みもないッスね」

「化合物、というと、俺の服とか肌とかを溶かしたのも・・・」

「硫酸ッスね。アタシの毒手の応用で酸も出せるようにしたんですよ。化合物の構造式とかそれなりの知識があれば出せるようになるッス」



 ゴリゴリの脳筋かと思いきや、理系の頭脳派だったワケだ。人と超能力は見た目によらないものだと再認識する。それだけの知識を使いこなすとなると相当な勉強が必要な筈だ。文系である俺にはサッパリだ。だからこそ、つくづく感心させられる。


「ところで、先輩がアタシの攻撃を一番最初に喰らったとき、軽くジャンプして受け流してたッスよね?あれ、なんなんですか?」

「ああ、アレね。アレは消す力と書いて『消力(シャオリー)』っていうんだ。中国拳法の技で俺たちの師匠が教えてくれた」

すると、冬美は怪訝そうな表情を浮かべる。

「シャオリー・・・?そんな技、中国拳法に無いッスよ」

「「え!?」」



 なんだ、その情報!?初耳だぞ!

「え、ちょっと待ってフユミちゃん。それマジなの?俺たちの師匠、本気(ガチ)な顔して教えてくれた技なんだけど」

「マジッスよ。確か大昔の格闘技漫画に出てくる架空の技だったハズ。アタシもその漫画のタイトルは覚えてないンスけどね」



 そういえば、師匠の家には小惑星衝突前に出版されていた漫画が大量にあった。俺も全部を読んだ訳ではないが、その中にその漫画があってもおかしくない。

「おじいちゃんの道場の休憩室に生徒のやる気を引き出すためにその漫画があったらしいッス。んで、その中の生徒がおじいちゃんに漫画を見せて『この受け身の技を教えて欲しい!』ってねだってたらしいンスけど、そんな技は無いって言ったそうッス」

「おいおい、まさか俺たちは存在しない技を教えられてたってことかよ・・・」



 俺たちは思わず気の抜けたような表情を浮かべ呆然としてしまう。だが、冬美はしばらく考え込んで口を開く。

「でも、似たような技術は太極拳にあったハズっス。相手の攻撃のベクトルをコントロールして攻撃を受け流すヤツが。回転の力も利用するらしいッスね。なので、先輩方の消力もあながち空想だけの技ってワケでもないと思うンスよ。実際、アタシの攻撃を軽減できたワケですし」


「確かに、それもそうか。廻原も宙返りすることで威力を軽減するし、俺たちの師匠も実戦で消力を使って無傷で居られてたしな」


「やっぱ、そうッスよ!空想も極めれば現実(リアル)になるってことッス!中国拳法もそうやって発展して来たんです!カマキリみたいに強くなりたい、虎みたいに強くなりたいって願った先人たちがその夢や空想に向かって修行してきた結果、現在の象形拳になったんスから!先輩方は、そして先輩方の師匠は漫画の象形拳を完成させたってことッス!それってめちゃくちゃかっけぇッスよ!」


 なるほど、確かにそう言われるとカッコイイかもしれない。うーむ、しかし、俺たちの師匠が漫画の知識を頼りに戦い、俺たちに技を仕込んでいたとはな。他にも余罪がありそうな気がしてきた不安になってきた。だが、空想が現実になるのはロマンがある。それで良いことにしよう。





 そして、俺は真衣に疑問をぶつける。

「ところで、真衣の超能力はどんな能力なの?エネルギー変換とか言ってたけど」

「私の超能力は厳密に言えば『エネルギー操作』です。これには2つの性質があります。」

「へー、どんな感じ?」


「1つ目は、エネルギーの性質の変化。これがエネルギー変換の部分です。例えば、電気エネルギーを熱エネルギーに、光エネルギーを電気エネルギーに、といった具合にエネルギーの持つ性質を変化させることができます。さらに、波動エネルギーといった架空のエネルギーに変化させることもできます。自分のイメージ次第のところではありますが」


 なるほど、モバイルバッテリーを武器にしていた理由がハッキリわかった。アレが1番持ち運びしやすく、そして用意しやすいエネルギー保管庫、というわけだ。ケーブルも使うことで照準を合わせやすくすることもできる。そして、エネルギー変換。これも汎用性が高そうだ。電気や熱をブラフを交えながら使うことで相手の動きをかなり制限できるだろう。実際、俺もかなり苦戦を強いられた。




「2つ目はエネルギー操作です。これは単純にエネルギーの動きを操作する力です。例えばエネルギーの塊を一直線に飛ばしたり、相手を追跡するように軌道を曲げたりできます。ですが、軌道を頻繁に曲げるとスピードは落ちますし、飛んでる間もエネルギーはどんどん消費されるので、基本的にはコスパのいい直線軌道で発射します」


 確かに、交流戦でも直線軌道の弾しか撃って来なかった。そして、俺はもう一つの疑問をぶつける。


「それで、能力の具体的な発動条件は?結構ブラフに悩まされたから気になるんだけど」

「はい、発動条件はすごくシンプルで、エネルギーやエネルギーが内部にある物体を直接触ることです。言葉は不要なんですよ」

「え、もしかして、『エネルギー変換』ってかけ声もブラフだったの!?」

「もちろんです!最初は複雑な発動条件に見せかけて、後から不意打ちをする。そして、技名と違うエネルギーを使って意表を突くんです。というか、必殺技の名前を叫ぶって、自分の行動を相手に教えるだけのリスクしか無い行為じゃないですか」



俺は思わず力強く反論してしまう。

「カァーーーーッ!わかってないねぇ!それがロマンってもんだろ!強いヤツってのは必殺技の名前を声高く宣言するモンだぜ!大昔からずーっとそうさ。戦術的にはアレかもしれないけど、一撃で相手を仕留めれば関係ないだろ?それこそが必殺技ってモンだ」


「そういうものなんですか?でも、私のエネルギー弾は一撃で相手を戦闘不能に出来ることは稀ですから、これからも技名はブラフとして運用していこうと思います。」

「まァそれでいいけど、任務となると仲間との連携も必要になるから、何かしらの合図を出してくれると助かる」

「わかりました。考えておきます」










 さて、今度は俺たちが能力を教える番だ。俺たちは自分の能力について細かく教えた。だが、廻原の解説が終わった後、2人はポカンとした顔をしている。

「どーしたの?2人とも、何かわからない部分あった?」

「い、いや、そもそも何を言ってるのかサッパリわからないッス・・・」

「私も、なにがなんだか・・・。頭がこんがらがりそうです・・・」



 無理も無いな。俺も初めて廻原と戦ったときはサッパリ理解出来なかった。俺はなるべくわかりやすいように言葉を選んで解説する。

「要は、廻原は俺たちが感じることができないところでいろいろやってくれてるってこと、かな?」

「ん~、わかったような、わからないような・・・」

「アタシはちょっとは理解した・・・ような・・・気がしなくもないッス・・・」

「まー、いずれわかるようになるよ」

「そうだな。俺も師匠がじっくり教えてくれたおかげで理解できたんだ。そうだな・・・。2人とも、トレーディングカードゲームはやったことある?」

「無いッスね」

「私もです。それと何の関係が?」

「いや、まあ、カードゲームに似たような戦略があるってこと。師匠はカードゲームも得意で、そのおかげですぐに廻原の超能力の正体を見破れたんだ。俺も師匠にカードゲームを教えてもらうえたからこそ理解できた」

「実際、俺の能力は趣味であるカードゲームに影響を受けて完成したっぽいんだ。後天的な超能力者だからさ」










─────この世には2種類の超能力者がいる。1つは、武縄や冬美のように遺伝で生まれつき超能力が使える人。もう1つは、廻原のように後天的に得た人。これは、超能力が使える遺伝子は持っているが、生まれた瞬間から使えるワケではなく、その後の人生の影響によって能力が発現するタイプだ。例えば、趣味やトラウマなどがその要因になることがある。廻原の場合、自身の趣味であるカードゲームが超能力発現のトリガーとなった────────











 すると、冬美が別の質問をしてきた。

「そういえばさっき、お2人の師匠が廻原先輩の能力を『見破った』って言ってましたけど、先輩って最初はお師匠さんと対立してたンスか?」

「あ~、実はそうなんだよね」

「そうそう、懐かしいな。俺らの出会いは()()だった。長くなるから、今度時間のあるときに、俺と師匠の出会いも含めてゆっくり話すよ」




 そろそろ、良い時間になってきたので、今日はこの辺でお開きとなった。新たな仲間たちはとても強くて良いヤツらだ。明日からの任務が少し楽しみだ。

今回もお読みいただきありがとうございました。


武縄と師匠の出会い、廻原との出会い、廻原の能力・・・

気になることは多いかと思いますが、それはいずれお話するつもりなのでお楽しみに。


もし、廻原の能力についての考察などありましたら、ぜひここの感想やTwitterのリプなどで聞かせていただけると嬉しいです。


これからもよろしくお願いいたします。

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