連携攻撃
向こうも連携攻撃か!さては初対面ではないな。いずれにせよ、何かしらの対抗策を練らないと負けに繋がる。ダメだ、考えがまとまらん!もういい、ぶっつけ本番だ!
「エネルギー変換!電気波動砲!5連!」
さっき廻原が喰らった光弾が背後から発射されたようだ。廻原の様子から察するにアレは電気を帯びたエネルギーの塊であると見て良いだろう。喰らったら感電してまともに動けなくなるはずだ。だが、避けられるような状況じゃない。であれば、一か八か、やるしか無い。俺は縄を床に伸ばして密着させる。そして次の瞬間、背中に大きな衝撃が走る。しかし、背中に走ったのは電気の痺れではなかった。
「ヌウォオオオオァァァァア!アツい!熱いアツい!アツゥイィィィィィ!」
凄まじい熱さだ。背中を強火で焼かれているような、壮絶な熱さだ。何が起こった?電気じゃないのか?電気波動砲って言ったじゃないか!?だから、アース線のように縄を床に伸ばしたのに!
「今から撃つ必殺技を敵に律儀に教えるおマヌケさんがどこにいるんですか!?そして、もう一発!エネルギー変換!喰らえ!」
いるんだよ!ここに2人!強い奴は必殺技を叫ぶモンだろ!それがロマンってモンじゃねぇか!
恐らく、さっきの廻原への攻撃で必殺技の名前を叫んだのはブラフの布石!能力の発動条件を誤魔化すため!多分「エネルギー変換」と声に出すだけで能力は発動できるのだろう。いや、それすらもブラフか!?わからん!もう、これは気にしないことにするッ!
そして、再び俺の背中に衝撃が走る。今度は間違いなく電気だ。さっき出した縄は熱さのあまり消してしまった。アース線を無くした俺の体は痺れで動けなくなる。熱と電気の波状攻撃、これほど苦しい攻撃は今まで受けたことがない。
「今だよ、冬美ちゃん!アレを決めちゃって!」
「了解ッ!先輩!これもかなりシンドいッスよォ!」
冬美は意識が朦朧としてきた俺に向かって走り出し、拳を振り上げた。身体が痺れで防御の姿勢が取れない。「まいった!」とも言えない。大人しく喰らう他ない。
「アタシは正々堂々、必殺技を叫びますよ!喰らえッ!アシッドブレイク!そして!ヴェノムラッシュ!」
強烈なパンチが何発も俺の身体に当たる。その度に服や皮膚が溶ける。突き刺すような痛みが上半身に広がった頃、今度は別のなにかが身体に染み込んでくる感覚におそわれる。パンチの度にじんわりと暖かいものが身体に染み渡る。ヴェノムと言ってたな。「毒」か。そんな気はしてた。酸で皮膚を溶かした後に、身体に直接毒を染み込ませる、そういうことだろうな。なんて残酷な能力だ。彼女の熱血な性格からは想像もできない恐ろしい力だ。超能力は性格や見た目からは判断できねぇモンだな。彼女のパンチだけでも十分敵を蹂躙できるが、万が一倒せなかった時のための毒なのだろう。
程なくして、冬美の恐ろしいラッシュが止まった。縄で何とか身体を支えたため、倒れ込みはしなかった。ただでさえ凄まじい威力のパンチを何発も喰らったんだ、意識が吹っ飛びそうだ。それでも意識が飛ばなかったのは、逆にパンチの威力が強すぎて、気絶しそうになる度に新たな痛みで目が覚めたからだ。
だが、その瞬間は突然訪れた。視界がボヤけてきた。目眩もしてくる。電撃による体の痺れもあったが、それも更に増してきたような気もする。そして、胃がひっくり返りそうになるほどの吐き気を催した。俺は耐えきれずに胃の中の物を全て吐き出した。倦怠感、目眩、耳鳴り、視界不良、吐き気、けんたいかん、めまい・・・。あれ、俺は何をしていたんだっけ?また、吐き気が。もう吐ききったはずなのに。胃液があふれてくる。身体のふるえかとまらない。あれ、ゆかがたおれてくる?あれ、ユかっテたオれてクるっけカ?タおれテいるのハおれのほウ・・・・?




