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特異点

 大陸連合政府が設立される少し前から、大陸各地で奇妙な現象が起き始めた。最初に報告が上がったのは旧・日本奈良だった。



20:54、物資の運搬を終え帰途に着いた作業員は薄暗い路地でとあるものに遭遇した。歩いていると後ろから湿っぽく、重たい音が聞こえ始めた。最初は普通なら気にならないほどに小さい音だったが、不運にも男の耳は常人より優れていたため気になってしまった。だんだんと音は近づいてくる。ベトッとした音が、嫌な空気が、男のすぐ後ろにまで迫る。全身からじめっとした嫌な汗が流れてくるのがわかった。これはただ事ではない。そして、祖母から昔聞いたある話を不意に思い出した。


「べとべとさん・・・か?」


 べとべとさんは日本の妖怪の一種で夜道に人間の後をつけるだけの無害な妖怪である。「べとっべとっ」という足音を立てるから「べとべとさん」である。主に、奈良県や静岡県に出没するとされている。無害であると頭では理解していても、恐ろしいものは恐ろしい。意を決した男はある行動に移った。男は一瞬走った後、道の端で立ち止まり、こう叫んだ。

「べとべとさんッ!お先にお越しッ!」

 すると、姿の見えない不気味な音は男をゆっくりと追い越し暗闇へと消えた。




 これだけなら、よくある作り話だと一蹴されるだろう。しかし、このような怪談じみた話が一斉に大陸全土で発生したら状況は変わってくる。共通しているのは、その土地で古くから伝わる昔話や伝説に登場する妖怪や怪物に遭遇したということだ。べとべとさんは無害だったからよかったものの、他の地域では死者も出る騒ぎとなった。



 奇妙な現象は怪物騒ぎだけではなかった。次は、大陸全土で同時多発的に、それもほぼ全ての人間に起こった。1人1つ、何らかの超能力を得たのである。一般的なサイコキネシスのような類いの能力を手にした者もいたが、筋力増強、目からビームを出す、物を際限なくヘソにしまう、木の枝を刃物に変える、などと言った誰もが一度は夢見た漫画のようなスーパーパワーを手にしたのだ。



 大陸連合政府はこれらの事態を非常に重く見た。大陸全土に蔓延る怪物をどうにかしない限り、復興は困難になる。そして、超能力も規制しなければ無法地帯と化してしまう。そこで、次の措置が決定された。怪物と超能力を使った犯罪者から人々を守る超能力部隊「大陸怪奇現象防衛隊」の設置、および「超能力使用に関する特別措置法」の制定である。


「大陸怪奇現象防衛隊」、通称「怪防隊」は試験によって選出されたエリート超能力者と、超能力を持たずとも超能力者や怪物と同等の実力を持つ者によって結成された連合政府直属の戦力である。


「超能力使用に関する特別措置法」、通称「超能力法」は緊急を要する場面以外での超能力の使用を原則禁止するものである。ただし、他者の人権を侵害しない場合はその限りではない。要は「実害が出るような超能力の使用を禁止する。」ということである。



 怪防隊の活躍により、怪物による被害は最小限に抑えられ復興は順調に進み、平和は徐々に戻ってきた。一方で、怪奇現象の発生や超能力が目覚めたことの原因についてはわからず、現在でも研究されている最中である。





 そして時代は流れ2426年、依然として怪奇現象や超能力犯罪に悩まされながらもネオス・パンゲア大陸は大いに発展した。これは、そんな科学とオカルトが共存したこの世界で怪防隊に所属する青年、武縄公介(タケナワコウスケ)が仲間とともに怪物と戦い、一連の怪奇現象の真実を追う物語である。

プロローグはこれでおわりです。

次回から本編となります。

最後までお付き合いいただけましたら幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。

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