表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネオス・パンゲア怪異ファイル 〜平凡な能力者、怪異と悪意をド根性と友情パワーでぶっ飛ばす〜  作者: 芦田メガネ
第1章 アジア編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/57

それはお互い様

元の大きさに戻り、時計も取り戻せた。ようやく一安心だ。ほっとため息をつくと、小山は慌てた様子で喚き始める。

「お、おい、アンタ!元に戻したんだ!早く血管の空気を抜いてくれ!」

「おぉ、忘れてた忘れてた。今やるからじっとしてろよ」


俺はストレージ付き腕時計から緊急医療セットを取り出し、その中からメスと万能外傷治療薬を取り出す。まずは、メスで空気の入った血管を切開する。小山は痛がり、悶絶するが気にせず作業を続ける。空気を抜いたら、そこに万能外傷治療薬をぶっかける。すると、みるみるうちに傷が塞がり、すぐに傷一つないキレイな肌に戻った。

「さて、約束通り治してやったんだ。お前も大人しく豚箱に入るんだな」


俺はそう告げて縄で小山を縛りつけ、回収用ボックスにぶち込もうとする。すると、小山がゲラゲラと笑い出した。


「ヌフフハハハハハハハハハハァァァ!」

「何笑ってんだ気持ち悪ぃ」

「いや〜、お前さァ、あの店で俺の事を詰めが甘いって言ってたけどさァ、それはお互い様じゃねェかって思ってよォ!」

「・・・何が言いたい」


「お前、2月の初め頃、あの店の看板を受け止めた男だよなァ?」

「そうか、お前も居たんだっけか。それが?」

「あの看板を落としたのは俺だ!俺自身が小さくなり、順番に看板を固定するネジを小さくして外し、最後に蹴落としてやったのさ」


「なるほどな、誰かが落としたんじゃねぇかとは思ってたが、やはりお前か。だが、話が見えねェな。なんでそれが詰めが甘いって話になるんだ?」

「お前、こうは思わなかったか?看板を落とすメリットなんてあるのか、と」

「思ったさ。だが、メリットなど思いつかなかった」

「そこさ、詰めが甘いのは。それだけじゃあない。なんで狐川(こがわ)、運転手が俺を安倍に変身させたとき、姿形だけでなく、()()()()()()()()()()()のか、疑問に思わなかったのか?会ったことも無い人間の声をよォ!」



そこは、盲点だった。畜生、なぜ気付かなかった!少し考えればわかったはずだ。コイツらが店の前に来たのは、安倍さんが時計を預けた後だ。安倍さんの声を聞いたことが本来はないはず!小山は話を続ける。

「答えはシンプル!あの店の店員の一人が!俺たちの仲間だからだァ!アイツの超能力はモノマネボイス!だから店に来た安倍の声を完璧に再現し、狐川がそれを元に安倍を完璧に再現したのさ!そして、俺が店の看板を落としたのは──」

「もういい、喋るな」

「ひでぶッ!」



俺は小山を殴って気絶させ、回収用ボックスにぶち込む。あの店にはまだアイツの仲間が居るってことじゃないか!摘田さんが危ない!

「廻原!急いで店に戻るぞ!」

「りょーかい!」


俺は窓を開けて叫ぶ。

「来い!BOB!」


俺の愛車が3階の窓の近くにやって来て、ドアが開く。俺と廻原は急いで乗り込む。そしてBOBに指示を出す。

「ヘイ、BOB!すぐに摘田時計店に向かってくれ!大至急だ!」

「Okay、ブラザー!自動運転、フルスピードでぶっ飛ばすぜ〜!しっかり捕まれよ!」




ようやく、全ての違和感の、謎の正体がわかった。まず、どこから高級時計(ロイヤルオーク)の情報を手にしたのか。それはグルだという店員から聞いたのだろう。そして、看板落下事故。あれは店長である摘田さんを店の外に出し、その隙に小山、もしくはグルの店員が安倍さんの写真や住所などの詳細な顧客情報を集めるため。更に、安倍さんの声を再現出来たのはさっき小山が言ってた通りだ。それに、俺たちの存在に気付いていたのも、おそらくグルの店員がいたからってのもあるだろう。


 全く情けない。なぜ、店の中にヤツらのグルがいることに気付けなかったのか!全く考えもしなかった。小山の言った通りだ。詰めが甘いのは俺も同じだ。




程なくして摘田時計店に到着する。しかし、店を離れて既に10分以上は経っている。摘田さんは無事だろうか。俺たちは店内に駆け込む。

「摘田さん、無事か!?」



すると、衝撃的な光景が目に飛び込んできた。店員の一人が壁際に血塗れで倒れており、その反対側のレジ近くにもう1人の店員と元の大きさに戻った摘田さんが震えながら抱き合っている。そして、高級そうなスーツを身につけた初老の紳士が血塗れの店員を見下ろしながらじっと立っている。すると、紳士は俺たちを一瞥し口を開く。

「おや、君たちはそこの下衆のお仲間かな?」

「待ってくれ、清行くん!その方たちは君の時計を取り戻そうと戦ってくれた怪防隊の隊員さんだ!」


清行くん!?確かによく見ると、さっき見た写真の男だ。この人が本物の依頼人、安倍清行さんか。

「おや、そうでしたか。それは大変失礼致しました。そして、ありがとう。私のロイヤルオークを守ってくれて」

「い、いえ。そうだ、これ、取り返してきた時計です。ご確認ください」


俺は廻原から時計の入った箱を受け取り、安倍さんに手渡す。安倍さんは白いシルクの手袋をはめ、時計をまじまじと観察する。

「うむ、間違いなく私の時計だ。傷一つない。それに、ちゃんと動いているね。さすがは、良夫くんが修理しただけある、完璧な仕上がりだ。そして、お二人が守って下さったおかげでもあるね。本当にありがとう」


安倍さんは深々と頭を下げる。見た目通りとても紳士的な方だ。

「では、私はこれで失礼するよ。良夫くん、代金は口座に振り込んでおくよ。不足分があったら請求書を送ってくれ。」

「あ、あぁ。また時間のあるとき、食事にでも行こう」

「そうだね。また連絡するよ。本当にありがとうね」




そして、安倍さんは店を出るとき、再び俺たちを見つめる。そして、こう語りかけてきた。

「君たちとはまたどこかで会えそうな気がするよ。その時まで、お互い死なないようにしないとね。では、また」




安倍さんは意味深なことを言い残し、最新式の高級車に乗って去って行った。俺たちは摘田さんに駆け寄る。

「摘田さん、大丈夫ですか?」

「えぇ、私も、隣の彼も無事です。しかし、あそこに倒れてる山根くんが犯人の仲間だったとは・・・」

「その山根って奴はもしかして・・・」

「そうです、清行くんがやっつけてくれました。それも、私たちが目を背けた一瞬のうちに」

今回もお読み頂きありがとうございました。

次回もよろしくお願いいたします。

以外、解説パートです。


緊急医療セット

怪防隊が開発した医療セット。メスや包帯などの医療道具の他に、瞬間治療薬シリーズが入っている。瞬間治療薬シリーズは様々な用途事に用意されており、すぐに病気や怪我が治る優れもの。ストレージ付き腕時計の5番に収納されている。


山根満(やまねみちる)

29歳 男

11月3日生まれ

超能力:モノマネボイス

概要:一度聞いた声を完璧に再現出来る。


安倍清行

56歳 男

1月11日生まれ

超能力?:???

概要:???

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ