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➅再び
「予約したからね」忘年会がキャンセルされた数日後、美紀は中田に言う。
「泊まり掛け、楽しみにしていたのに。責任とってよね」
「予約?」
「ホテルを予約したからね」
日本三景の観光ホテルなのだそうだ。戸惑うが、断われない。
(なんで)
散々、嫌味も言われた。
社内でも1、2と呼べる容姿の二人だった。
その休日が近づき憂鬱になる。会社は労組が強いせいか、その頃には珍しい完全週休2日制だった。
そもそも、女性と関わる事を嫌っていた中田であった。知らない訳ではない。仕事上でなければ誰とも関わらずにいたい。
「迎えにきてね」
金曜日、美紀が中田に囁いた。