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➄失念

夏のボーナスの頃、出張に行く。本社の寮に泊まり、業界の協会の技術講習会、雅生はスーツを買う。白い麻のスーツ、新幹線で本社に行き、一週間の講習、朝の署名をすると殆ど観光に費やした。

 

 そして、冬のボーナスが近づき忘年会が設定される。

「中田」雅生の事である。工場で部長の服部が呼び止めた。

 その頃には、中田が課長と話す事を殆どない。何か、問題が起これば中田は服部に伺う。

「おまえが幹事をやれ」

何が何でも、課に馴染ませようとの魂胆。

 どうやら、泊まり掛けにするらしい。中田は了解した。旅行会社に予約手配を済ますと服部に言う。

「手配は済ませましたので、私は行きません」

 泊まり掛けの忘年会はキャンセルされ、近場の居酒屋に変更された。

 技術部内、俗に云う試験室には女性が日々、製造過程のサンプル試験を行っている。中田がハンカチを渡した女性もその一人、入社した頃は嫌みも言われた。

 12月に中田の誕生日、「中華料理さんに予約したからね」と、店名も告げられた。


「美沙子ちゃんも一緒」

「へ?」と思いながら、返事をした。

中田は失念したのである。

 翌日から、二人は口をきかなかった。試験を頼んでも、頷くだけで頑として喋らない。 中田も分からず、意地になり話さないままの一週間、美紀が試験をしながら泣き出した。

「俺、何か悪い事をやった」

「来なかった」

「いつ?」

「誕生日」

「あっ!」

 中田は平謝りするのである。

 料理が三人分、テーブルに並んでいたと美紀は泣きながら話した。

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