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➀入社
(内定通知?)
雅生は、送られてきた茶封筒を手にして思った。内定の意味がわからないのだ。指導教員が設定する会社は、悉く面接で落ちた。同期の学生は通ったようだ。教員に合否が知らされる。成績は問題ない、何故か?と問うと、「面接が」と。
そもそも、雅生も駄目だろうと思っていた。履歴書は正直に書いていた。学生になる前は、二十歳過ぎまで出稼ぎや流れ者もいる土木宿舎、飯場に五年もいたから土木作業員と書いた。
「建設会社に、いたのは?」
「食うためです」雅生は、そういう他はない。
指導教員は、最後の手段なのだろうか、知る化学メーカー の専務を研究室に呼び出した。卒業研究に没頭している雅生をみる。
雅生は、また土木作業員になれば良いと思っていた。訳のわからぬまま、会社の素性もわからぬまま入社式に行く。