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⑮エピローグ

 まだ、ヒロはパチンコ店から動かない。池袋駅近くに、事務所を借りると言っている。中田は、それまで静かに暮らしたい。

「今日、会える」

 美沙子からの電話に「はい」と応え、美沙子の退社時間に合わせ、帰り道の喫茶店に行く。先に着いた中田は席で、コーヒーを飲んで待つ。

「ティラミス」

 遅れて、美沙子が頼んだ。

「昨日、大ちゃんが課長をなぐったの」

 中途入社した男である。

「何で」

「中さんが辞めたのは、課長のせいだと」

 中田は、驚く。(俺は、勝手に辞めたのだ。課長は関係ない)

「戻れないの」

 無理な話である。勝手気儘に辞めた男が戻れるはずがない。ヒロとの話もある。

「無理ですね」と中田は言うしかない。

「美紀さんも、元気ないですよ。漫画みた?」

「美沙子さんだったの」

 美沙子は、課がおかしくなったと言うが、もう、関係の無い事である。本社からは、改編の通知がきたと言う。二人は席を立ち、各々の車に向かう。

 きびすを返し、美沙子の車に 向かうと気付いた美沙子が窓を開けた。

「パチンコ店に、中さんを連れて行かないでと、言おうかと思った」

 どこで、そんなことが洩れていたのか、中田には分からないが、小さな田舎の事である。美沙子が不憫であった。

 窓から顔を出す、美沙子に静かに顔を寄せた。「好きですよ」と唇を合わす。

 翌日、中田は係長の佐伯の家を訪れた。課長と歳は変わらないが、奔放さに課長となれずにいた。中田の態度を気にかけていたのは知っていた。

「泊まっていけ」

 中田は、頷く。町に数件しかないスナックに行く。

「中、お前は辞めると言ったら聞かないもんな」

 その通りどうしようもない。中田は頷く。

「俺のところに、専務から手紙がきていた。〈中田を、絶対辞めさせるな〉と」

 今更と思う中田だが、それを聞いたら、尚更頑なになっていただろう。


 池袋の事務所に東上線で、ヒロと中田は通う。バブルの終わりが近い。ヒロが自分の会社を持ちたかったと理解していた。父親のパチンコ店は、不調に喘いでいた。ヒロには子もいる。

 中田の困り事は、美紀から仕事の問い合わせがあること、中田のプログラムの更新、プログラムがファックスで延々と流れてくる。それを中田は拒めない。ヒロは、苦々しく思う。中田は、出先に行くと言って新幹線に飛び乗る事もあった。一時間半程で駅に着く、 美紀がエスカレーターを上ってくる。タクシーで城跡に行く。自然の植物園に行く。手を繋いだ。唇を合わす。また、新幹線で戻って机に戻る。ヒロの仕事は、土建屋時の顧問弁護士の下働き、また、その名を借りた口利きである。しかし、バブルの末期、それで食える訳もない。

「俺は、消えるよ。ヒロが何をしたいのかわからない」

 リスクだらけで、生きてきた。そんなもんだ。ヒロが、木刀を手にしていたが、中田が睨み付けると、手をおいた。中田は、扉を出るとき手を上げた振った。駅に行き、新幹線にのった。

 もう、ヒロにも、美沙子、美紀にも会う事はないだろう、

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