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⑩きっかけが

「中やん」

 金曜日の夜、博から電話がはいる。麻雀の誘いである。店への納入業者の家で、卓をかこみ、朝まで続き、店に勤める嫁の朝飯を食らう。子供、三姉妹と散歩をするのが通例であり、末子はいつも肩車をせがむ。中田が東京に家出して、勤めた土建屋の息子、歳は同じでよくつるんで繁華街に遊んだ。中田は、バラックのプレハブで五年ほどいた。土木不況で廃業した社長が始めたパチンコ店から学校に通っている。

 博は、専務の立場だが近々、自分の会社を持ちたいと言っていた。店の運営は芳しくはない。大陸の資金がない邦人経営、借り入れ金の返済で四苦八苦していた。中田の微々たる保険も解約の憂き目にあっている。

「中やん、来ない?」

 間の悪い誘いであった。会社を辞めることになる。(ながれなのかな?)中田は思う。

 朝、食堂に顔を出す事が減り、昼も食堂で食う事が減った。昼は、近くの公園で途中の店で買うパンをかじる。課長との折り合いが悪いだけで、皆、良くしていると感じていた。博は、多分失敗するだろう。モヤモヤしながら、中田は過ごす。

 美紀を気にする事が大きくなった。構内呼び出しの頻度も多くなり急いで部所に戻る。

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